竹富島憲章 (竹富公民館)  作成 2014.02.22

 
 八重山観光のメッカ、八重山を象徴する観光地として有名な竹富島。今日この竹富島は、琉球赤瓦の屋根とサンゴの石垣(グック)、サンゴの白砂を引いた道など昔ながらの八重山の風景を留めていますが、1972年の本土復帰のころ八重山のいたるところで土地買い占めが横行し、竹富島も同様に土地が買い占められていました。こうした状況に対し、「島外者に土地が買われ、島の自然、文化が変質、崩壊する」と危機感を持った人たちが立ち上がり、乱開発を止めさせるために「土地の買い占め・売り渡し反対運動」が展開されました。

 こうした状況下、ちょうど1971年にできたばかりの「妻籠宿を守る住民憲章」を参考に、翌1972年に「竹富島を生かす憲章案」がつくられました。これは本土企業の進出、あるいは大型開発から島を守るために土地を「売らない」「汚さない」「乱さない」「壊さない」「生かす」という保全優先を基本理念に制定されたもので、これが発展・充実化され、1986年に今日の「竹富島憲章」が制定されるとともに、他の島や集落で同様の住民憲章・公民館憲章が制定されることとなりました。なお、竹富島ではこうした取り組みが実を結び、1987年(昭和62年)4月28日に、国より重要伝統的建造物群保存地区(町並み保存地区)の指定を受けました。
 
重要伝統的建造物群保存地区に指定されている
竹富島の家並み(なごみの塔より)
 
竹富島憲章 (昭和61年 竹富公民館)

 われわれが、祖先から受け継いだ、まれにみるすぐれた伝統文化と美しい自然環境は、国の重要無形民俗文化財として、また国立公園として、島民のみならずわが国にとってもかけがえのない貴重な財産となっている。
 全国各地ですぐれた文化財の保存と、自然環境の保護について、その必要性が叫ばれながらも発展のための開発という名目に、ともすれば押されそうなこともまた事実である。
 われわれ竹富人は、無節操な開発、破壊が人の心までをも蹂躙することを憂い、これを防止してきたが、美しい島、誇るべきふるさとを活力あるものとして後世へと引き継いでいくためにも、あらためて「かしくさや うつぐみどぅ まさる」の心で島を生かす方策を講じなければならない。
 われわれは今後とも竹富島の文化と自然を守り、住民のために生かすべく、ここに竹富島住民の総意に基づきこの憲章を制定する。
 
一、保全優先の基本理念

 竹富島を生かす島づくりは、すぐれた文化と美しさの保全がすべてに優先されることを基本理念として、次の原則を守る。

 1、『売らない』 島の土地や家などを島外者に売ったり無秩序に貸したりしない。
 2、『汚さない』 海や浜辺、集落等島全体を汚さない。また汚させない。
 3、『乱さない』 集落内、道路、海岸等の美観を、広告、看板、その他のもので乱さない。また、島の風紀を乱させない。
 4、『壊さない』 由緒ある家や集落景観、美しい自然を壊さない。また壊させない。
 5、『生かす』 伝統的祭事行事を、島民の精神的支柱として、民俗芸能、地場産業を生かし、島の振興を図る。
   
二、美しい島を守る

 竹富島が美しいといわれるのは、古い沖縄の集落景観を最も良くのこし、美しい海に囲まれているからである。これを保つために次のことを守り、守らせる。

 1、建物の新・改・増築、修繕は、伝統的な様式を踏襲し、屋根は赤瓦を使用する。
 2、屋敷囲いは、サンゴ石灰岩による従来の野面積みとする。
 3、道路、各家庭には、年二回海砂を散布する。
 4、看板、広告、ポスター等は、所定の場所に掲示する。
 5、ゴミ処理を区分けして利用と回収を図る。金属粗大ゴミは業者回収を行う。
 6、家庭下水は、処理して排水する。
 7、樹木は、伐採せず植栽に努める。
 8、交通安全、道路維持のために、車両制限を設ける。
 9、海岸、道路などゴミ、空きカン、吸殻などを捨てさせない。
 10、空き家、空き屋敷の所有者は、地元で管理人を指定し、清掃及び活用を図る。
 11、観光客のキャンプ、野宿は禁止する。
 12、草花、蝶、魚貝、その他の生物をむやみに採取することを禁止する。

 
三、秩序ある島を守る

 竹富島が、本土や本島にない魅力があるのは、その静けさ、秩序のとれた落ち着き、善良な風俗が保たれているためである。これを保つために次のことを守り、守らせる。

 1、島内の静けさを保つために、物売り、宣伝、車両等の騒音を禁止する。
 2、集落内で水着、裸身は禁止する。
 3、標識、案内板等は必要に応じて設ける。
 4、集落内において車輌は、常に安全を確認しながら徐行する。
 5、島内の清掃に努め、関係機関による保健衛生、防火訓練を受ける。
 6、水、電気資源等の消費は最小限に留める。
 7、映画、テレビ、その他マスコミの取材は調整委員会へ届け出る。
 8、自主的な防犯態勢を確立する。
 
四、観光関連業者の心得

 竹富島のすぐれた美しさ、人情の豊かさをより良く印象づけるのに旅館、民宿、飲食店等、また施設、土産品店、運送業など観光関連業従事者の規律ある接遇は大きな影響がある。観光業もまた島の振興に大きく寄与するので、従事者は次のことを心得る。

 1、島の歴史、文化を理解し接遇することで、来島者の印象を高める。
 2、客引き、リベート等の商行為は行わない。
 3、運送は、安全第一、時間厳守する。
 4、民宿の宿泊は、良好なサービスが行える範囲とする。
 5、屋号は、規格のものを使い、指定場所に表示する。
 6、マージャン等賭け事はさせない。
 7、飲食物は、できるだけ島産物を使用し、心づくしの工夫をする。
 8、消灯は、23時とする。
 9、土産品等は、島産品を優先する。
 10、来島者に本憲章を理解してもらい、協力を徹底させる。
 
五、島を生かすために

 竹富島のすぐれた良さを生かしながら、住民の生活を豊かにするために、牧畜、養殖漁業、養蚕、薬草、染織原材料など一次産業の振興に力を入れ、祖先から受け継いだ伝統工芸を生かし、祭事行事、芸能を守っていく。

 1、伝統的祭事、行事には、積極的に参加する。
 2、工芸に必要な諸原料の栽培育成を促進し、原則として島内産物で製作する。
 3、創意工夫をこらし、技術後継者の養成に努める。
 4、製作、遊び、行事などを通して子ども達に島の心を伝えていく。
 
六、外部資本から守るために

 竹富島観光は、もともと島民が、こつこつと積み上げてきた手づくりの良さが評価されたからである。外部の観光資本が入れば島の本質は破壊され、民芸や観光による収益も住民に還元されることはない。集落景観保存も島外資本の利益のために行うのではないことを認識し、次に掲げる事項は、事前に調整委員会に届け出なければならない。

 1、不動産を売買しようとするとき。
 2、所有者が、氏名、住所を変更しようとするとき。
 3、土地の地番、地目、地積に異動を生ずるとき。
 4、賃貸借をしようとするとき。
 5、建造物の新・増・改築、取り壊しをしようとするとき。
 6、島外所有者の土地に建物等が造られようとするとき。
 7、その他風致に影響を及ぼす行為がなされようとしているとき。
 
 この憲章を円滑に履行するために、公民館内に集落景観保存調整委員会を設け、町、県、国に対しても必要な措置を要請する。
      昭和61年3月31日

 参考 竹富町民憲章
     昭和47年「竹富島を生かす憲章案」
     昭和46年「妻籠宿を守る住民憲章」
     上記の精神を引き継ぎ、修正、追加を行い、案を作成した。


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