四ケ字の豊年祭(ムラプール)2015  更新 2015.10.10


 石垣島最大の伝統行事は、五穀豊穣に感謝し来夏世(クナツユ)の豊作を祈願する「豊年祭」ですが、その豊年祭の中でも一番規模が大きく賑やかなのが四カ字(シカアザ)の豊年祭です。四カ字とは、石垣島の市街地(中心部)にある「新川」、「石垣」、「大川」、「登野城」の字のことで、豊年祭はこれらの地区が合同で行うものですが、最近は四カ字だけでなく、周辺の新興集落や学校、団体等も参加するようになっています。

 四カ字の豊年祭は二日間にわたり開催され、一日目のオンプール(御嶽プール)は各字会の御嶽で開催され、二日目のムラプールは、「新川」字会が「大川」「石垣」「登野城」の各字会を招き、真乙姥(マイツバ)御嶽にて合同で開催されます。

 ムラプール[*1]では、各字会や各種団体の自慢による旗頭や伝統芸能が奉納されますが、特色あるそれぞれの旗頭や奉納行事・伝統舞踊を一堂に見る事ができます。
 また、豊穣の神が出現する「五穀の種子授けの儀」、女性だけで繰り広げられ子孫繁栄を祝う「アヒャー綱」、勇壮な「ツナヌミン」、「大綱引き」など見ごたえのあるものも多くあり、夜遅くまで賑やかに行われます。

 2015年の四カ字豊年祭は、8月6日(木)、台風13号が八重山地方に近づく中、新川の真乙姥御嶽(マイツバオン)で開催されました。当日は、旗頭が15本立ち、巻踊りをはじめ数多くの芸能が神前に奉納されました。
 

 四カ字の豊年祭の開催日は、新暦の7月中旬から8月上旬頃であり、1日目は市内四ヶ所の御嶽でオンプール、2日目は真乙姥御嶽[*2]でムラプールが行われます。
 2015年のムラプールのスケジュールは前年同様、以下のようになっていましたが、例年「巻踊り奉納」は長引き、「五穀の種子授けの儀」は約1時間以上遅れて開催され、この年も同様な進捗状況でした。メインとなる行事は、凡そ15時30分〜21時頃までの間と捉えておくとよいでしょう。

【予定表】
 
真乙姥御嶽 9:00 大神酒奉献
長崎御嶽 14:00 巻踊り奉納
真乙姥御嶽 15:30
16:00
17:30

18:00
19:30
豊年祭祝典
巻踊り奉納
五穀の種子授けの儀
アヒャー綱 (西へ大綱の移動)
大神酒奉献
ツナヌミン・大綱引き
 
[*1] 豊年祭は、「プール」、「プーリィ」、「プーリン」などと各字(村)によって呼び方が多少異なります。これを漢字に当てはめると「プー=穂:五穀」、「ル(リィ、リン)=礼:儀礼」を意味し、つまりは「穂の儀礼」ということになろうかと思います。
[*2]  真乙姥は、16世紀初頭のオヤケアカハチの乱で王府軍に味方して勝利に導いた功績により、神として祀られていて、その遺徳をしのびムラプールの会場(祭場)になっているそうです。各字会は午後から各御嶽の旗頭を先頭に真乙姥御嶽に集まります。なお、各字会には、それぞれの字会を象徴する2本の旗頭があります。

四ケ字の豊年祭(ムラプール)2015の様子

真乙姥御嶽です。周辺は13時頃から交通規制が行なわれます。 樹齢2〜300年と言われるオオバアコウの巨樹の下の広場(境内)で各種芸能が奉納されます。
こちらは、真乙姥御嶽の神司さんです。 新川字会の会長さんの挨拶と思われます。時刻は15時45分頃です。この後、祝辞が続きます。
こちらは、中山石垣市長の祝辞。 乾杯で奉納舞踊等がスタートします。
 
新川字会の旗頭奉納です。相当重い旗頭を一人で持ち上げてバランスを取り動き回ります。 旗頭は鳥居の左右に縛り付けられます。
各字会を代表する四御嶽の神司の皆さんと思われます。 氏子の皆さんと思われます。
ここから各種芸能の奉納で、最初は新川字会からです。 まずは巻踊り奉納からです。
子どもたちも参加します。 中にはこんな人も。背中に背負っているのはお酒でしょうか。
新川字会の皆さんによる巻き踊りです。 杵を持った踊りのようです。
 
鎌を持った踊りです。 こちらは鍬を持った踊り。
これは鉦です。 鉦に合わせて太鼓を打ちます。
 
ここからは双葉公民館の皆さんによる奉納です。 鉦を打ち鳴らします。
鉦に合わせて太鼓を打ちます。 婦人による巻踊りのようです。
 
 
ここからは大川字会の皆さんによる奉納です。 鉦を打ち鳴らします。
鉦に合わせて太鼓を打ちます。
三板(サンバ)を使った踊り。
 
ここからは大川字会の皆さんによる奉納です。
ここは鉦と太鼓に加えて法螺貝も吹き鳴らされます。 笠を使った踊りです。
続いて巻踊り奉納です。
 
ここからは登野城字会の皆さんによる奉納です。
こちらも法螺貝が鳴らされます。
巻踊り奉納です。
 
「JAおきなわ」の皆さんによる奉納です。 こちらは三板(サンバ)を使った踊り。
 
石垣島製糖(株)の皆さんによる奉納です。 鉦鼓の奉納です。
 
石垣市役所の皆さんによる奉納です。最初に市長の挨拶もありました。 若手メンバーを中心にした鉦鼓の奉納です。
 
八重山農林高校の郷土芸能部の皆さんによる奉納です。 稲作をテーマにした舞踊です。これは田植えの様子?
かなりの練習を積まれ、よく揃っていて素晴らしいです。
稲の収穫の様子がよく表されています。
 
石垣中学校の皆さんによる奉納のようです。
こちらは田植えの様子を演じたものです。
こちらは鎌を持って稲刈りの様子を演じたものです。 刈り取った稲を手にしています。
 
 
東京八重山会の皆さん?による奉納のようです。
 
各団体の奉納後、予定より約80分遅れの18時50分頃から、「五穀の種子授けの儀」が行われました。 東から稚児を連れた五穀豊穣の神(農の神)が板舞台に乗って登場します。
 
西からは真乙姥御嶽の巫女が現れます。こちらも板舞台に乗っての登場です。 真乙姥御嶽の前で両方が出会います。
農の神から巫女に五穀(稲、粟、麦、大麦、甘藷)の種子が手渡されます。これにより来年の豊作が約束されるといわれています。 扇を挙げ種子が手渡されたことを表しています。これで来夏世の豊穣が約束されました。その後凄いスピードで両者は離れます。それを祝って女性たちが喜び踊ります。

 無事、「五穀の種子授けの儀」が終わると、次は女性のみで行われる「アヒャー綱」の儀式に移ります。男性は、この儀式が終わるまで綱には触わってはいけないそうです。
 「アヒャー綱(「アヒャーマ綱」とも言います。)」は女性だけで繰り広げられます。ブルピトゥ(棒貫人)に選ばれた女性が神司から授かったブル棒(貫棒:カヌチ棒とも呼ばれます)で雌雄の大綱をつなぎ合わせると、取り囲んだ大勢の婦人たちが「サァー、サァー、サァー、サァー」と掛け声を上げガーリー(歓喜の乱舞)で熱狂、盛り上がります。「アヒャー」とは、貴婦人という意味だそうです。
 詳細な説明は、2014年のページを参照してください。

写真中央の棒がブル棒(貫棒:カヌチ棒)です。 今年はこの入嵩西さん(74)が「ブルピトゥ」です。「ブルピトゥ」は一生に一度の大役で、しかも1年に一人という、女性にとっては大変名誉のある役だそうです。
雌雄の大綱を両側から持ち寄ります。「ブルピトゥ」は、神司から受け取った「ブル棒(カヌチ棒)」で雌雄の大綱をつなぎ合わせます。 「ブルピトゥ」は、神司に無事に綱が結ばれたことを伝えます。結び終わると、周囲の女性たちが「サァー、サァー、サァー、サァー」と掛け声を上げる「ガーリー」で盛り上がります。
 
 「アヒャー綱」の儀式の後、ブル棒が抜かれ2本になった大綱を見物客も参加して皆で水元の神前とされる真乙姥御嶽の西側200mの所に移動させます。
皆で力を合わせ引っ張っていきます。
全団体の移動が完了する頃、ちょうど日が暮れます。随分と暗くなってきました。 全ての旗頭が移動され、再度固定されます。そして再び八重山農林高校郷土芸能部の皆さんの踊りで場が盛り上がります。
 
 大綱の移動を終えるといよいよ「ツナヌミン」です。
 日が傾きかけたころ、綱の両側から松明に囲まれて、東から「薙刀」、西から「鎌」を持った武者が板舞台に乗せられてきて出会い、大綱の中央で勇壮なツナヌミンを演じます。
 「ツナヌミン」とは「綱の耳」、つまり綱引きの結びあう先端の「耳」を表しています。なお、地元の方の中には、この「ツナヌミン」のことを「牛若丸と弁慶」と呼ぶ方もおられます。
 
武者が板舞台に乗せられて登場します。周囲の照明は全て落とされ松明の明りがたよりです。 東は薙刀を持ち、西は鎌を持っています。これは、飾り手(歌舞伎でいう「見得」のような動作)を決めながらやってくる東の武者。
  今回は相当離れた所の、かつ見通しのきく高い位置に陣取りましたが、撮影には不向きでした。
爆竹の合図で戦いが始められます。 不安定な板舞台の上で武者が華麗に乱舞する姿は勇壮です。
周囲は指笛の音で盛り上がります。
戦いの場と撮影場所とが相当離れていましたので、写りはよくありません。 もっと近い場所に早めに移動して撮影場所の確保をするべきでした。
左下の交通標識板でストロボの光が反射したのも想定外でした。
爆竹の合図で終わります。 とたんに凄いスピードで元の場所まで戻ります。
 
 フィナーレは大綱引きで、東西二組に分かれ合図とともに大勢の市民や見物客が東西に綱を引きあいます。
 組み合わせは、兄弟村といわれる登野城と石垣、大川と新川に別れて引きます。
 終わったら、細い引き綱(縁起物)を取り、持って帰ります。
 
見物客も参加できます。
凄い熱気の中で綱を引き合います。 これで5時間以上にわたるムラプールが終了します。
 


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