このページでは、あまり知られていない八重山諸島の火山や温泉について紹介します。
1.八重山諸島の火山
地球の内部は、「マグマ」に代表されるように、高温で大量の熱エネルギーが蓄えられており、そのエネルギーが地表(大気中)へ放出される現象が火山活動です。 火山活動の活発な火山は、「活火山」と呼ばれ、「概ね過去1万年以内に噴火した火山、および現在活発な噴気活動のある火山」と定義されています。 地球上には約1,500の活火山があると言われていますが、そのうち日本には108の活火山があります。
●北緯24度34分、東経123度56分の位置
●北緯24度46分、東経123度59分の位置 |
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八重山諸島近辺では、「西表島北北東海底火山」という海面下の活火山があります。
関東大震災の翌年の1924年(大正13年)10月31日の朝に、西表島の北北東約20kmの沖合で突如海底噴火が起こりました。
この噴火の状況については、偶然にも付近海上を通りかかった大阪商船株式会社の貨客船・宮古丸の船長の詳細な報告が残っていて、その記録では、海底の大噴火によって莫大な量の軽石(*1)が噴出し、付近一帯の海面を埋め尽くしていたそうです。 噴火の中心付近では、海水が沸騰しているようであったとか、大噴水が沖のほうへ広がっていったとか、また、連鎖的に爆発音が聞こえ、その度に軽石が飛び散っていたなどと記されており、相当大規模な海底噴火現象であったようです。
この時の海底の噴火点は、●北緯24度34分、東経123度56分だったとされていますが、最近の海底地形調査では、この位置は舟状海盆の斜面に相当し火山を想定させる地形・地磁気異常が認められないため、実際には西表島の北北東45kmの火山地形と推定される小海丘(●北緯24度46分、東経123度59分)であっただろうとされています。
なお、海底噴火のあった1924年以降では、1991年(平成3年)1月23日に、西表島の北部から沖合で群発地震が発生し、翌1992年(平成4年)12月頃まで非常に活発な群発地震が発生し、規模の大きい有感地震も3回観測されています。
ところで、この海底大爆発によって海面に噴出した軽石は、10月末であったこともあり荒北風(アラニシ:新北風)の風波で八重山群島の各島々の海岸にも打ち寄せられ、白い砂浜を灰褐色に変えるとともに、各港では船の出入りに困難を感じさせるほどであったと言われています。
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その後、噴出された軽石の大部分は海流に乗って漂流を始め、沖縄本島に到着したのは3週間後で、その後も軽石は北東に漂流を続けました。 軽石は、沖縄本島の西岸を通過するあたりから二手に分かれ、一つは黒潮に乗って東に分かれ、九州・四国・東海・関東の沖を流れて銚子沖から東の太平洋に向かい、一部は北上して宮城県沖に流れました。 一方、西に分かれた軽石は対馬海峡を抜けて日本海に入り、最も北では翌年の10月に北海道の礼文島で確認されました。 途中、一部は津軽海峡を東に抜け、下北半島沿いに南下し三陸の宮古で確認されています。
この軽石の漂流到着記録から、それまではっきりしていなかった日本付近の海流(黒潮・対馬海流・親潮)の様子が明らかになったそうです。
八重山諸島は、いずれも隆起珊瑚礁の島々で構成されていると思われている方が多いかと思いますが、実は石垣島・西表島・与那国島は、かつては火山島で、これらの島々では局所的ではありますが火山岩を見ることもできます。
例えば、石垣島北部の野底岳(野底マーペー)の特異な形は、火山溶岩の差別浸食の地形とされています。
この他にも、石垣島の屋良部崎の突端の岬では、緑色凝灰岩(グリーンタフとも呼ばれます)があり、岩の上には数ミリ〜1センチほどの大きさの、濃い灰色の粒状の石が無数に乗っている風景を見ることができます。この粒状の石は、一名「雨の化石」とも呼ばれています。 しかしながら、この「雨の化石」は実際の雨の化石ではなく、火山の噴火によってできた「火山豆石(*2)」とされ、凡そ5,000万年前に生成されたものと推定されています。
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(*1)「軽石」 |
主に流紋岩質〜安山岩質のマグマが噴火の際に地下深部から上昇し、減圧することによってマグマに溶解していた水などの揮発成分が発泡することにより多孔質となったものが軽石で、発泡しすぎて粉砕されると火山灰となります。 軽石はたくさんの穴を含んだ多孔質のため水に浮くことができます。
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(*2)「火山豆石」 |
「火山豆石」は、火山灰が丸い玉のように固まったもので、水蒸気の多いマグマ(地熱で溶けている地中の岩石)による火山の爆発でできることが多いとされていますが、でき方については、火山灰が玉になったとする説、噴火によって生じた雲から降る雨が大気中を落下する際に火山灰を周りに付着させてできたとする説、堆積した火山灰に雨が降ってできたものとする説などがあります。
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2.八重山諸島の温泉
火山があれば、当然のことながら温泉が湧きます。
八重山諸島で温泉として有名なのは、「西表島温泉」と「竹富島海底温泉」でしょう。
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【西表島温泉は、源泉水の確保が困難となり、2012.10.31に閉鎖されました。】
[以下は開業時の紹介記事]
「西表島温泉」は、竹富町高那西平川にある温泉で、日本最西端・最南端に位置する温泉です。
泉質はナトリウム・カルシウム硫酸塩泉(低張性中性温泉)で、pHは7.4。
泉温は32.2℃(従って入浴には加温が必要となります)、湯量は64L/min。
屋内と屋外にそれぞれ浴場があり、屋内には露天風呂と内風呂がありますがこちらは男女別で、屋外は水着着用で共浴になっています。入湯料金は、大人1,500円、小人750円ですが、併設のホテル・パイヌマヤリゾートの宿泊者は無料です。
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←竹富島
●海底温泉湧出孔の位置 |
竹富島海底温泉は、ダイバーには名の知れたダイビングスポットで、竹富島の東部海域(東経124度6分・北緯24度20分の水深約20m付近)にあり、海底から40度以上の湯が湧き出ています。
すり鉢状の地形をした熱水噴出域で、中央に熱水噴出孔があり、南側斜面を登ったところにはカーテン状に気泡が噴出する箇所があります。 また、中央の熱水噴出孔から南南西約35mの地点には、気泡を一定間隔(約5〜6分毎)で噴出する間欠泉があります。 |
3.補足(その他の沖縄県の火山)
因みに、八重山ではありませんが、沖縄県には、「硫黄鳥島」という今でも噴煙をあげる活火山があります。(従って沖縄県には、「西表島北北東海底火山」とこの「硫黄鳥島」の2つの火山が存在することになります。) 沖縄県久米島町に属する「硫黄鳥島」は南西諸島の島の一つで、沖縄県の最北端に位置する(那覇市の北北東約190km、徳之島の西方約65km、沖永良部島北西約65km)絶海の孤島ですが、現在も噴煙を上げています。
1959年(昭和34年)6月 8日に噴火し、活動は約1か月続き、泥・硫黄が海上に流出しました。 この時に全島民86人は久米島に避難・移住しています。 1967年(昭和42年)にも噴火し、硫黄採掘の従事者も撤退し、以降、完全な無人島となっています。
「硫黄鳥島」は、火山活動度ランクCの活火山(100 年活動度および1万年活動度がともに低い活火山)で、火山名としてかつて沖縄鳥島と呼ばれたこともあるそうです。
なお、「西表島北北東海底火山」は、火山活動度ランクDの活火山(火山データーが不足しているために、ランク分けの対象外になっている活火山)にされています。
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