字「登野城」の豊年祭(オンプール)2018 作成 2018.09.15
石垣島最大の伝統行事が「豊年祭」ですが、その豊年祭の中でも一番規模が大きく賑やかなのが四カ字(シカアザ)の豊年祭です。四カ字とは、石垣島の市街地(中心部)にある「新川」、「石垣」、「大川」、「登野城」の字のことで、豊年祭はこれらの地区が合同で行うものですが、一日目のオンプール(御嶽プール)は各地域の御嶽で行なわれます。
四カ字という各地区にはそれぞれに信仰する御嶽があり、「新川」字会は長崎御嶽、「石垣」字会は宮鳥御嶽、「大川」字会は大石垣御嶽、そして「登野城」字会が天川御嶽で、それぞれの御嶽を中心に豊年祭(オンプール)は行なわれます。豊年祭の内容自体は各地区毎に異なり、しかもそれはそれぞれの地区の特色を生かしたものになっています。
今回見学した「登野城」字会の豊年祭(オンプール)は、8月4日(金)の14時から裁判所東側の天川御嶽(アーマーオン)にて開催され、人びとは今年の稔りに感謝し、来夏世(クナツユ)の五穀豊穣を祈願しました。旗頭奉納は勿論のこと、地域に伝わる各種の芸能を奉納したほか、優秀な成績を上げた農家を表彰し、最後は、棒術、獅子舞奉納を行い18時頃に終了しました。
なお、神事はこれよりも早く行なわれ、神司や字会役員の方たちは、午前8時半頃に八重山の稲作伝来の発祥の地とされる米為(イヤナス)御嶽の北側にある小波本(クバントゥ)御嶽でニンガイ(祈願)をした後、米為御嶽で儀式が行なわれました。そして、字会役員や地域の長老らが古式ゆかしくミシャグパーシィ[詳細後述]を行なったほか、舞踊等の奉納が行なわれました。
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四カ字の豊年祭の開催日は、新暦の7月中旬から8月上旬頃であり、1日目は市内四ヶ所の御嶽でオンプール、2日目は真乙姥御嶽でムラプールが行われます。
四カ字のオンプールの開催場所・時刻は以下の通りです。
字「新川」(長崎御嶽)は、14時から (神事は真乙姥御嶽でも行われます。)
字「石垣」(宮鳥御嶽)は、15時半から
字「大川」(大石垣御嶽)は、16時から (神事は美崎御嶽でも行われます。)
字「登野城」(天川御嶽)は、14時から (神事は米為御嶽(イヤナスオン)でも行われます。)
いずれも約3~4時間程度行われますので、「新川」や「登野城」字会の行事を見てから「大川」のオンプールに出向くというのもよいかと思います。但し、いずれも途中からとなりますが…。
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登野城字会の旗頭の旗文字とその意味は、以下のとおりです。
神穂花 : 稔れる穂は神からの賜りもの
天恵豊 : 天の神々の恵みと来夏世の豊作を祈る
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「登野城」字会のオンプールは、凡そ以下のような流れで進められました。(今回は下表の全ての内容を見学しました。)
1. |
●奉納
祈願文章読
神事(ミシャグパーシィ)
太鼓の奉納 巻き踊り奉納
旗頭・舞踊奉納
舞踊奉納(桃里節)
舞踊奉納カラーガード(八重校カラーガード部) |
2. |
●優良生産農家表彰 |
3. |
●祝宴の部
舞台奉納芸能
石垣市無形文化財「大胴小胴(ウードウクードウ)」と太鼓の段のもの
棒術奉納
獅子舞奉納 |
字「登野城」の豊年祭(オンプール)2018の様子
まず旗頭奉納が行われます。 |
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この後、旗頭は鳥居のそばに縛られます。 |
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全員が拝殿前に整列し拝礼します。 |
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開式の挨拶です。 |
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字会長による祈願文奉読が行なわれます。 |
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神事・ミシャグパーシィ(神酒奉納)」の儀式です。ミシャグパーシィは、稲作以前の粟作時代からの古い歴史ある祭儀とされています。 |
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(ミシャグは観客席にも振る舞われます。) |
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ミシャグパーシィは、豊年を喜ぶ古謡を歌いながら神酒の入った角皿(ツノザラ)をゆっくり左右に揺らして、飲みます。 |
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現在のミシャグはアルコール発酵していない、ドロドロしたあまり甘みの無い甘酒みたいな飲み物です。 |
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角皿をゆっくり左右に揺らして、飲みます。 |
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手前側が終わると奥側の方々で同様の儀式が行われます。 |
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(1)ミシャグパーシィとは
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神前に捧げる神酒を四ケ字ではミシャグまたはミシィと呼びますが、これはミキ(神酒)の転訛です。沖縄本島ではウンサク、ウンチャク、宮古ではンキ、ンクなどと呼ばれるそうです。主に新穀の米で作られますが、粟、芋などが加えられることもあるようです。
神をたたえ、来年の豊作をお願いする瑞謡をうたいながら飲みまわす儀式を「ミシャグパーシィ」と言います。(大浜村では「スヌザラパーシィ」、西表の祖納や干立では角皿(ツノザラ)・中皿と言うそうです)。
「ミシャグパーシィ」の儀式は、給仕の1人が「ダーク」(神酒をつぐ容器)を持ち、別の1人はお膳を持ち、一方で客は酒を入れる角皿(椀)を持ち、向かい合って左右にゆっくり揺らせながら交互に歌い、最後に飲むというものです。
なお、今日、四カ字のオンプーリィで「ミシャグパーシィ」を行う御嶽は、字「登野城」では米為御嶽&天川御嶽、字「大川」では大石垣御嶽&美崎御嶽、字「石垣」では宮鳥御嶽、字「新川」では長崎御嶽となっています。
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(2)ミシャグ(ミシィ)の作り方
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八重山では戦前まで、選ばれた歯の丈夫な健康な若い女性(ミシカンピトゥと呼ぶそうです)が、塩で歯を磨き、髪を整え鉢巻をし、清潔な着物を着、袖まくりして、作業にあたったそうです。
材料は固めに炊いた粳米、水につけた生米、そして水で、これをミシカンピトゥが噛み、全部噛み吐き出し終ったら、水底の一旦噛んだ飯を再度噛んだそうです。それを石臼で細かく挽き、甕に入れて密封し醗酵させます。2日目はバガ(若)ミシィといって甘味が強く、3日目が最も美味しいそうです。(古くは、粟、キビ、麦、芋でもミシャグをつくったと言われています。)
こうして作られるものをカン(噛み)ミシィと呼び、このカンミシィの習俗は、本土では古代、沖縄本島では廃藩置県前後に廃止されたそうです。なお、このカンミシィは古代中国・日本はもとより、台湾・メラネシア・ミクロネシア・ポリネシア・南アメリカの原住民の間に広く分布し、また、これらの地域ではいずれも酒を噛み作るのが主として女性となっているそうです。
なお、今日、ミシャグは若い女性が噛んで作ることはなく、新米の御飯を炊いて冷やし、水を加えてミキサーで挽き、その時、水につけた生米も同時に挽いて加え、これに砂糖や水を混ぜて密封し、3日くらいで出来上がるそうです。(余談ですが、以前白保村で頂いたものは結構アルコール発酵(添加?)していましたが、登野城村のものはそのようなことはありませんでした。)
昔と作り方は変わりましたが、神に供え感謝する豊穣のシンボルという意味で、今日でも重要なものとなっています。なお、今日、ミシャグを作るのは主に役員の仕事となっているそうです。 |
拝殿の中の様子。左手に神司さんが座っておられます。 |
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拝殿の奥の様子です。 |
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「太鼓の奉納」です。女の子が鉦を鳴らし、鉦に合わせて男の子が太鼓を打ちます。 |
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先頭の男の子も上手に法螺を吹きます。 |
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ここから奉納舞踊となります。 |
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婦人会の皆さんによる巻き踊りです。 |
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次も巻き踊りが奉納されます。 |
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やえやま幼稚園児による「かりゆし太鼓」です。 |
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登野城小学校生徒による旗頭奉納です。 |
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石垣第二中学校生徒による「繫昌節」。 |
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2年ぶりに参加の八重山高校郷土芸能部の生徒による奉納舞踊。 |
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地謡 |
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八重山高等学校カラーガード部による舞踊奉納カラーガード |
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2年ぶりに参加の八重山高校郷土芸能部の生徒による奉納舞踊。 |
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「ンーマヌシャ」(馬乗者)です。 |
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「まみどーま」です。 |
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動作が実によく揃っていて綺麗でした。 |
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練習の成果がよく発揮され見事でした。 |
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天川御の拝殿内の様子です。 |
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イビに向かって神司が祈ります。 |
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旗頭を持つ姿は実に勇壮です。 |
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天川御嶽を鳥居の里側から眺めた景色。 |
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優良生産農家の表彰が行われました。 |
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表彰される農家の皆さんです。 |
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字会長の挨拶。 |
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来賓の石垣市長の祝辞。 |
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八重山農林水産振興センター長の乾杯の音頭。 |
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まずは、石垣市無形民俗文化財の「大胴小胴(ウードゥクードゥ)と太鼓の段のもの」です。大胴とは太鼓、小胴とは小鼓を意味しています。 |
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本土の能楽系統の芸能のようで、古く大和在藩時代、駐在大和の役人によって伝えられたと言われています。 |
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八重山の他の伝統芸能と比べると、とても異質に感じられます。 |
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登野城婦人会による「鷲ぬ鳥節」です。 |
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4町内による海のぽんぼらー・久高節・海上節です。 |
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登野城ユンタ保存会による今日が日ジラバ(ユンタ)です。 |
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石垣第二中学校郷土芸能部による繁盛節です。 |
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登野城民友愛好家による八重山民謡歌祭りです。 |
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8町内による極真空手演舞です。 |
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青年会によるチュイチュイです。 |
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5町内によるバンド民謡ショーです。 |
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音楽に合わせて踊り出す人も出てきます。 |
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塩を撒いて境内が清められた後、棒術保存会による棒術奉納が始まります。 |
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これは棒同士の戦い。 |
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次は鎌と棒の戦い。 |
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こちらも棒同士の戦い。 |
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フィナーレは獅子保存会による獅子舞奉納です。登野城では一番最後に獅子舞が行われます。 |
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右側は獅子使い、左側は演奏者の皆さんです。 |
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登野城の獅子使いは4人で、棒術のような踊りを披露します。 |
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獅子1頭の登場です。 |
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立ち上がると結構大きな獅子です。 |
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雄・雌、2頭による獅子舞です。 |
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2頭の獅子が玉をくわえ引きあいます。 |
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最後に万歳三唱が行なわれ閉会しました。時刻は18時過ぎです。
この後は、宮良集落の豊年祭へと出掛けました。
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