沖縄では守り神としてよく知られるシーサー。 シーサーとは、「獅子」のことを沖縄方言で表したものですが、八重山では「シーシー」とも言われます。 (例えば、石垣島の「730の碑」のある場所の別名は、「シーシーパーク」です。) なお、シーサーは英語では、lion-dogといいます。
シーサーは沖縄の伝統的な赤瓦葺きの家の屋根の上だけでなく、建物の玄関口、門柱、集落の入口などに置かれ、一般に、「災いをもたらす悪霊を追い払う魔除け」として知られていますが、実はシーサーは災いを防ぐだけではなく、「幸せを離さない」という意味もあると言われています。
ここでは、屋根の上に設置されるシーサーについて記すこととします。
1.シーサーのルーツと歴史
シーサーのルーツは、中国の石獅子などと同じく、古代オリエントに起源をもつ「獅子(ライオン)」とされています。 遠くオリエントからシルクロードを経て、中国、沖縄にまで伝わった文化の一つとされています。 強さの象徴として尊敬された獅子(ライオン)が、長い道のりと時の流れの中で姿を変え、現在のシーサーとなったと考えられます。
シーサーは当初、城門・寺社・王陵・集落の入口などに置かれていましたが、現在のように各戸の屋根の上に置かれるようになったのは、庶民にも瓦葺き屋根が許されるようになった明治以降のことで、これより屋根に獅子を据えて魔よけとする風習が一般に広まっていったようです。
2.シーサーの雄・雌の違い
シーサーは、元々は屋根獅子として単独で設置されていたものですが、最近では恐らく本土の「獅子・狛犬」の影響を受けて、阿吽(あうん)像一対(ペア)で置かれるのが増えているようです。 [勿論、単独設置も数多くあります。] 阿吽像では向かって右側が口を開いた「阿像(阿形)」、左側が口を閉じた「吽像(吽形)」とされています。
また、シーサーには雌・雄の区別があるとされ、阿吽像と同様に一般的に向かって右側が「雄」(阿像)とされ口を開いていて、左側は「雌」(吽像)とされ口を閉じています。 [但し、この逆配置のものもあります。]
雄が口を開いているのは、「男は言うべき事は言う」という理由からの他、魔物や災いに対する威嚇や、火を吐いて悪霊を退ける、自分の所に来る悪いものを食べる・・・といった意味を持っているそうです。
一方、雌が口を閉じているのは、「女は慎ましやかに」と言う理由からの他に、自分の所で掴んだ幸せをしっかり離さない(福を掴んで離さない)ように咬んでいるからだそうです。 このためか、このシーサーは「招福シーサー(幸せ招きシーサー)」と呼ばれたりもしています。
3.シーサーの設置の方向と意味
シーサーを屋根上にペア設置する場合は、前述したように口を開けた方を向かって右側に、口を閉じた方を左側に置くのが一般的です(逆の場合もあります)。 また、単独で設置する場合には、雄(口を開いているもの)を置くことが多いようですが、必ずしもそうとも言えません。下の写真は全て竹富島でのものですが、単独設置の場合は雌・雄のいずれもあることが容易に分かるかと思います。
次に、シーサーの設置方向についてですが、魔除けとされるシーサーは風水思想の影響を受けていて、その向きにも「魔除け」の意味が持たされているのが一般的です(が、必ずしもそうとは言えない場合もあります)。 例えば、いわゆる鬼門の方角となる北東、火伏せの方角となる南、それに門や突き当たりの道に向けられているのが一般的のようです(因みに、竹富島では大半が南向きのようです)。 拡大解釈すれば、一つの屋根上にいくつものシーサーが設置されるとともに、それぞれが別の方角を向いていることもある、ということになります。 極端な例をあげれば四角い屋根の四面のそれぞれの方角に一体づつ設置されている場合もあるということになります。
このように、シーサー設置は必ずしも風水といった特定のルールに従っているわけでもなく、好き勝手に置いている家も数多くあるということになります。 伝統が守られているようで意外と自由に富んだ対応がとられているのが実態と言えるでしょう。
4.シーサーの作り方
一般に屋根上に設置されるシーサーの材質は、陶器製と漆喰製がありますが、漆喰製のシーサーは屋根職人(屋根左官屋:赤瓦と漆喰で屋根を仕上げる職人さん)が瓦を葺き、最後の仕上げにサービスで作ったものだそうです。 その製作は、瓦を適当な大きさに割ってそれを漆喰で繋ぎ止めながら作るため、シーサーの一つひとつが異なった格好・表情をしているということになります。
5.シーサーの写真
※シーサーは、与那国島や小浜島ではあまり見ることができません。
色々なシーサーを集中して見比べてみたいなら、やはり竹富島を訪問されることをお勧めします。
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