屋根上のシーサー  更新 2014.01.04

青字の箇所を追加しました。

 沖縄では守り神としてよく知られるシーサー。 シーサーとは、「獅子」のことを沖縄方言で表したものですが、八重山では「シーシー」とも言われます。 (例えば、石垣島の「730の碑」のある場所の別名は、「シーシーパーク」です。) なお、シーサーは英語では、lion-dogといいます。
 シーサーは沖縄の伝統的な赤瓦葺きの家の屋根の上だけでなく、建物の玄関口、門柱、集落の入口などに置かれ、一般に、「災いをもたらす悪霊を追い払う魔除け」として知られていますが、実はシーサーは災いを防ぐだけではなく、「幸せを離さない」という意味もあると言われています。
 ここでは、屋根の上に設置されるシーサーについて記すこととします。

1.シーサーのルーツと歴史
 シーサーのルーツは、中国の石獅子などと同じく、古代オリエントに起源をもつ「獅子(ライオン)」とされています。 遠くオリエントからシルクロードを経て、中国、沖縄にまで伝わった文化の一つとされています。
 強さの象徴として尊敬された獅子(ライオン)が、長い道のりと時の流れの中で姿を変え、現在のシーサーとなったと考えられます。
 シーサーは当初、城門・寺社・王陵・集落の入口などに置かれていましたが、現在のように各戸の屋根の上に置かれるようになったのは、庶民にも瓦葺き屋根が許されるようになった明治以降のことで、これより屋根に獅子を据えて魔よけとする風習が一般に広まっていったようです。

2.シーサーの雄・雌の違い
 シーサーは、元々は屋根獅子として単独で設置されていたものですが、最近では恐らく本土の「獅子・狛犬」の影響を受けて、阿吽(あうん)像一対(ペア)で置かれるのが増えているようです。 [勿論、単独設置も数多くあります。] 阿吽像では向かって右側が口を開いた「阿像(阿形)」、左側が口を閉じた「吽像(吽形)」とされています。
 また、シーサーには雌・雄の区別があるとされ、阿吽像と同様に一般的に向かって右側が「雄」(阿像)とされ口を開いていて、左側は「雌」(吽像)とされ口を閉じています。 [但し、この逆配置のものもあります。]
 雄が口を開いているのは、「男は言うべき事は言う」という理由からの他、魔物や災いに対する威嚇や、火を吐いて悪霊を退ける、自分の所に来る悪いものを食べる・・・といった意味を持っているそうです。
 一方、雌が口を閉じているのは、「女は慎ましやかに」と言う理由からの他に、自分の所で掴んだ幸せをしっかり離さない(福を掴んで離さない)ように咬んでいるからだそうです。 このためか、このシーサーは「招福シーサー(幸せ招きシーサー)」と呼ばれたりもしています。

3.シーサーの設置の方向と意味
 シーサーを屋根上にペア設置する場合は、前述したように口を開けた方を向かって右側に、口を閉じた方を左側に置くのが一般的です(逆の場合もあります)。 また、単独で設置する場合には、雄(口を開いているもの)を置くことが多いようですが、必ずしもそうとも言えません。下の写真は全て竹富島でのものですが、単独設置の場合は雌・雄のいずれもあることが容易に分かるかと思います。
 次に、シーサーの設置方向についてですが、魔除けとされるシーサーは風水思想の影響を受けていて、その向きにも「魔除け」の意味が持たされているのが一般的です(が、必ずしもそうとは言えない場合もあります)。 例えば、いわゆる鬼門の方角となる北東、火伏せの方角となる南、それに門や突き当たりの道に向けられているのが一般的のようです(因みに、竹富島では大半が南向きのようです)。 拡大解釈すれば、一つの屋根上にいくつものシーサーが設置されるとともに、それぞれが別の方角を向いていることもある、ということになります。 極端な例をあげれば四角い屋根の四面のそれぞれの方角に一体づつ設置されている場合もあるということになります。
 このように、シーサー設置は必ずしも風水といった特定のルールに従っているわけでもなく、好き勝手に置いている家も数多くあるということになります。 伝統が守られているようで意外と自由に富んだ対応がとられているのが実態と言えるでしょう。

4.シーサーの作り方
 一般に屋根上に設置されるシーサーの材質は、陶器製と漆喰製がありますが、漆喰製のシーサーは屋根職人(屋根左官屋:赤瓦と漆喰で屋根を仕上げる職人さん)が瓦を葺き、最後の仕上げにサービスで作ったものだそうです。 その製作は、瓦を適当な大きさに割ってそれを漆喰で繋ぎ止めながら作るため、シーサーの一つひとつが異なった格好・表情をしているということになります。

5.シーサーの写真
 ※シーサーは、与那国島や小浜島ではあまり見ることができません。
   色々なシーサーを集中して見比べてみたいなら、やはり竹富島を訪問されることをお勧めします。

 
安里屋ユンタで有名な美女クヤマの生家のシーサー
竹富島・西集落にて
ちょっと古風で歴史を感じさせる
口を開けたシーサー(単独)

竹富郵便局の南側の屋根に乗っているシーサー
竹富島・東集落にて
口を開け伏せたシーサー(単独)

あいのた集落の旧家で、種子取祭で有名な
石垣家(イナシャ)のシーサー  竹富島・東集落にて
ほとんど口を閉じ、落ち着いた感じのシーサー(単独)

いつも花いっぱいの民宿「松竹荘」の南側の
屋根に乗っているシーサー  竹富島・東集落にて
ここの屋根には2基のシーサーが乗っています。
右側は口を閉じ、左側が口を開けています。

民宿「仲盛荘」の南側の屋根に乗っているシーサー
竹富島・東集落にて
口を開け横を向いたシーサー(単独)
顔は相当デカイです。

竹富島で一番古い宿の「高那旅館」のシーサー
竹富島・東集落にて
他とはちょっと変わった素焼き風のシンプルなシーサー

高那旅館が経営する郵便局向いの茶屋「たかにゃ」の
南側の屋根に乗っているシーサー  竹富島・東集落にて
口を閉じたシーサー(単独)

そば処「竹の子」の屋根にちょこんと乗っているシーサー
竹富島・西集落にて
古風で歴史を感じさせるシーサー(単独)

東筋の公民館である「あいのた会館」のシーサー
竹富島・東集落にて
足が細く意外と個性的なシーサー(単独)

手作りおかしの店「トーラ」の屋根に乗ったシーサー。
「トーラ」とは台所を意味します。  竹富島・西集落にて
口に魚をくわえたシーサー(ペア・左側)
もう片方(中央)は口を開きお座りをしています。

水牛車の「新田観光」の南側の屋根に乗っているシーサー
竹富島・西集落にて
口を開けお座りをした姿のシーサー(単独)
目はビー玉です。

平成5年(1993)10月に造られた竹富東港屋根付歩道の
屋根上のシーサー。
老朽化のため2012年2月に解体されました。 竹富島にて
素焼きのシーサーでした。
今はもう見ることはできません。

NHKのTVドラマ「つるかめ助産院」のロケで使われた
民家のシーサー  竹富島・仲筋集落にて
口を少し開け、おしりを高く上げた姿のシーサー(単独)

日本最南端のお寺で八重山の民俗資料を展示した博物館として知られる喜宝院蒐集館のシーサー  竹富島・西集落にて 口を少し開けた顔と尻尾に特徴のあるシーサー(単独)

喜宝院蒐集館のお隣(上勢頭邸)の屋根に乗っている
シーサー  竹富島・西集落にて
共に口を開けお座りをした姿のシーサー(2基)

民家の屋根に乗っているシーサー
竹富島にて
口を少し開けお座りをした姿のシーサー(単独)

民家の屋根に乗っているシーサー
竹富島にて
立ち姿で玉を掴んでいるシーサー(単独)

民家の屋根に乗っているシーサー
竹富島にて
口を少し開けお座りをした姿のシーサー(単独)

民家の屋根に乗っているシーサー
竹富島にて
伏せをして少しおしりを上げた姿のシーサー(単独)

「ガーデンあさひ」さんのシーサー
竹富島・西集落にて
2基のシーサーが並んで
親子のようなシーサー

羽山会館(仲筋集落の集会所)のシーサー
竹富島・仲筋集落にて
2基の、ともに口を開けたシーサー

「素泊まり古民家 香風(kahuu)」のシーサー
竹富島・仲筋集落にて
ちょっと個性的なライオンのような縦髪のあるシーサー

「ヌベマの甕」で有名な仲筋家のシーサー
竹富島・仲筋集落にて
真っ黒なシーサー

「民宿新田荘」のシーサー
竹富島・西集落にて
左右に2基のシーサーが鎮座しています。

仲筋の東側の民家の屋根に乗っているシーサー
竹富島・仲筋集落にて
口を閉じ、玉(ボール)を抱えたシーサー(単独)

民家の屋根に乗っているシーサー
竹富島にて

民家の屋根に乗っているシーサー
竹富島にて

仲筋の民家の屋根に乗っているシーサー
竹富島・仲筋集落にて
ここは明治38年に建てられた竹富島で一番古い
東金城(アイカナンキャ)さんの家です。

民家の屋根に乗っているシーサー
竹富島にて
個性豊かな、とても小さなシーサーです。

「民宿大浜荘」のシーサー
竹富島・東集落にて
狛犬のような2基のシーサーが鎮座しています。

「民宿のはら荘」のシーサー
竹富島・西集落にて
「民宿のはら荘」は西集落にある民宿です。

 

「丸八レンタサイクル」のシーサー
竹富島・東集落にて
イタチかカワウソのような胴長のシーサーです。
振り向いた格好が面白いです。

以下のシーサーは、それぞれ異なる家のものです。 

玉(ボール)を持ち口を閉じた「萬木屋(バンギャ)」の
シーサー(単独) 竹富島・東集落にて
お座りをした「稲福屋(イナック)」のシーサー(単独)
竹富島にて

「内盛屋(ウツリャー)」のちょっと変わったシーサー(単独)
竹富島にて
他のものと大きく異なり、首だけ出し這い上がって
いるような民家のシーサー(単独) 竹富島にて

口を閉じ、伏せた姿のシーサー(単独)
竹富島にて
3基のシーサーが設置されている姿
竹富島にて
 

番外編 (屋根上ではなく道のそばにあるシーサー)

これは「お願いシーサー(別名:お祈りシーサー)」という、手を合わせてお願いしているシーサーです。  竹富島にて どこにあるのかを誰にも聞かずに探し出し、お祈りをとなえると一つだけ願い事が叶うそうです。でも、他人からその場所を聞いたら効き目はなくなるそうですから、自分の力だけで探し出してください。
意外と気付かないで前を通り過ぎているかもしれません。
 

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