マンゴーの話 作成 2015.07.18

 
1.マンゴーの概要
 
 マンゴーは、インドから東南アジアのインドシナ半島周辺が原産の、ムクロジ目ウルシ科マンゴー属の常緑高木で、亜熱帯から熱帯地方で育ちます。(温帯域では最低耐寒温度の管理をすれば育てられます。) 品種は何千種類もあるといわれています。
 代表的な南国フルーツの一つで(糖度は高いのに上品な味わいで、甘み・酸味・水分のバランスが絶妙で、果物の女王と呼ばれます)、果実の大きさは品類(系統)によって異なりますが、長さ3~25cm、幅1.5~15cm、重さ50~500g程度と開きがあり、その形は広卵形とも勾玉形とも評されます。また、果皮の色は赤色、緑色、黄色と変化に富みますが、果肉は黄色から橙紅色で多汁です。果皮は強靱でやや厚く、熟すと皮が容易に剥けるようになります。未熟果は非常に酸味が強いのですが、完熟すると濃厚な甘みを帯び、松脂に喩えられる独得の芳香を放つようになります。種子は、果実の中に1つ入っていて、扁平で大きく硬い繊維質の殻に覆われています。

 マンゴーは、以前は主にメキシコやタイ、フィリピンなどから輸入されていましたが、2000年頃からは国内でも生産量が増え、身近な果物になってきました。国内産の完熟したマンゴーは特有の香りがあり、果汁が多く濃厚な甘味があり、口当りもとても滑らかです。マンゴーの味はとても美味しく、生の果肉そのものが完成されたスイーツと言っても過言ではありません。生食は勿論ですが、プリンやケーキ、アイスクリームなどにも加工されます。

 なお、マンゴーは、「ウルシ科」ということもあり、ウルシの「ウルシオール」に似た「マンゴール」という接触性皮膚炎(かぶれ)の原因となる物質が含まれています。人によっては果汁に触れるとかゆくなったり、かぶれたりします。特にアレルギーのある人は、高率にかぶれを引き起こすため注意が必要です。痒みを伴う湿疹などのかぶれ症状は食べてから数日経って発症・悪化する場合もあります。
ハウス栽培のマンゴー


路地植えのマンゴー(西表島)

  
2.マンゴーの歴史
 
 マンゴーは、インド東部やミャンマーでは約4000年前から栽培が始められ、仏教の経典にもそのように記されているそうです。

 国内には明治初期に鹿児島県に持ち込まれたのが最初のようですが、沖縄県におけるマンゴー栽培は、明治30 年(1897)に農業試験場で栽培されたのが始まりで、以後、数品種が導入され、適応性調査に供されました。しかし、開花の時期がちょうど梅雨になるため結実しにくく、また炭疽病が発生し、花穂全体が枯死したり、開花はしても着果には至らず、営利を目的とした栽培は実現できませんでした。
 その後、1958年にハワイから「ヘイデン種」が導入され、次いで1973年に5品種、1975 年に4 品種が導入されました。 その後も台湾等からの導入品種も含めて数十品種が試験栽培されましたが、 結実性と消費者のし好性から「アーウイン種」が最も多く栽培されるようになりました。
 併せて、1970年代頃からビニルハウスによる雨よけ栽培が行われ、炭疽病防除と着果安定ができるようになり、マンゴの経済栽培が本格化しました。

 その後、わい化栽培技術の確立に加え、1993年(平成5 年)に本土への果実出荷の最大制限要因であったウリミバエが根絶されたことで、農家のマンゴーの生産意欲が高まり、栽培面積が増えていきました。 生産者の努力、研究の賜物、ハウス栽培技術の普及等によって、今日では国内シェアの半分を占めるまでになりました。
 
【マンゴーの日】 

 7月15日は「マンゴーの日」
 
 沖縄県の「マンゴーの日」は、2000年に県、農業団体などで構成される沖縄県農水産物販売促進協議会により制定されました。この日は、例年、マンゴー(アップルマンゴー)の収穫期間の中ごろで、最盛期(7月15日前後から下旬)の直前にあたります。マンゴーの日制定により、県産ブランドとして県内外に広く知れ渡るようになったと思います。 (八重山のマンゴーの最盛期は、このマンゴーの日よりも少し早目です。)

(参考) 5月25日は「みやざきマンゴーの日」

 「マンゴー(5)にっ(2)こ(5)り」」の語呂合わせと、この季節は宮崎県産マンゴーの出荷が最盛期に当たることから、JA宮崎経済連の宮崎県果樹振興協議会亜熱帯果樹部会によって2014年に制定されました。
 
3.マンゴーの栽培
 
 2010年度のマンゴーの全国総収穫量は3,412.6 tでした。1位は沖縄県で1,711.0 tで全体の42.6%、2位は宮崎県の1,096.5 t、3位は鹿児島県の435.8 tで、この3県で全体の95%を占めます。以下、熊本県、北海道、静岡県と続きます。2位の宮崎県は比較的新しい産地ですが、今では沖縄県の生産量に追いつく勢いがあります。旧東国原宮崎県知事に就任して以来、積極的にアピールするとともに特に高品質のものを「太陽のたまご」というブランド化したこともあり、今日では高級マンゴーと言えば宮崎県産というイメージが定着しつつあります。また、第5位が北海道となっていますが、これは温泉熱を利用しコンピューター制御された特殊なハウスで栽培されているものだそうです。

 マンゴーの木は常緑高木で、樹高は10~20m以上、中には40m以上に達する品種もあり、よく分岐しドーム状の樹形になります。屋外での自然栽培は別として、ハウス内での栽培では、一般に高さ1.5m前後に剪定調整されます。これは手間のかかる作業を地上から手の届く範囲の中で効率よく行おうとする考えに基づくものです。葉は長楕円形で長さ10~30cm、若葉のころは赤褐色で次第に緑色へと変化していきます。

 生育適温は20~30℃です。4月下旬~11月頃までは屋外の日当たりと風通しの良い場所で育てます。6月の梅雨時は炭素病が発生しやすいので、雨が当たらないように注意します。冬は、寒さに弱いので亜熱帯域以外ではハウス内での加温が必要となります。11月~4月中旬くらいまでは日当たりの良い室内で、8℃~10℃以上15℃未満の場所で乾燥気味に管理します。


 以下に、アーウィン種の主な栽培方法について紹介します。
箱詰めされたマンゴー
 
① 出蕾、開花

 花芽をつけるには15℃以下の低温に当てる必要があり、かつ、乾燥気味にすることで花芽分化を促すことができます。低温期が終わり徐々に温度が上がってきたら 枝の先端に萌黄色の複総状花序を多数付けます。
 花は、500~2000個の総状花序と呼ばれる小さな花が集合して花穂が形成されています。
 花は開花後に強烈な腐敗臭を放ちます。この腐敗臭により受粉を助けるクロバエ科などのハエを引寄せています。マンゴーの原産地の熱帯地域は、ミツバチにとって気温が高すぎるため、マンゴーは受粉昆虫としてハエを選んだと考えられています(日本のハウス栽培農家では受粉を助ける昆虫としてミツバチをハウス内に飼っているのが多いようです)。

 花穂には、雄花と両性花が混在しており、自家結実性で一本の木で結実します。花数は多いのですが着果するのはその中のごくわずかです。
マンゴーの栽培には温度管理がとても重要で、開花期は受粉適温20~30℃を維持することが求められます。20℃以下になると受粉・結実が正常に行なわれず、種無しマンゴー(ミニマンゴー)になってしまいます。(個人的にはミニマンゴーは大好きなのですが、商品価値に乏しいため、生産地を除き市場にはほとんど出回りません。)
 また、開花期は水分を多く必要とするので水撒きを多めにしますが、ハウスの湿度が上がり過ぎると炭疽病やうどんこ病が発生します。対策として換気をまめに行い、病気にかかった花や実の園外への持ち出しと焼却を徹底して行います。
開花が始まると、花は急速に成長するのでその重みで枝が折れることもあります。そのため、蕾が出てから開花までの1ヶ月間は花房を上から紐で吊り下げて枝を支えます。
 開花期間は長く約1ヶ月間ほど続きます。
マンゴーの花

結実した様子
 
② 結実、摘果

 開花以降の土壌乾燥は実が落ちる原因となるので、こまめな水撒きをします。
 より大きく美味しいマンゴーを育てるため、育てる果実以外を取り除く「摘果」という作業を行います。摘果は葉50~70枚に1果が適正とされています。
 最終摘果と同時に果実を紐で吊り下げて、1個1個に太陽光線が十分に当たるようにします。果実が肥大して暗紫色になってきたら白色の袋をかけます。(袋ではなくネットを使用する方法もあります。) この袋をかける時期が早いと果実の色が悪くなり、遅いと病気になりやすくなるので十分な注意が必要です。

※ ネットがけした場合、果実の下に反射板を敷き色付きを良くする方法がとられる場合もあります。
紐で吊り下げられた果実
 
③ 収穫

 通常アーウィン種は、最低1日1回ハウス内を見まわり、袋内(ネット内)に落ちた果実を収穫します。この方法により完熟した果実を収穫することができます。
 しかし、この方法は鮮度にバラつきが出やすいこともあり、多くの農家は落果直前の果実を目で確認して、朝夕2回に分けて収穫と出荷を行っているようです。
袋がけされた果実
ネットがけされた果実
 
④ 収穫後の管理

 翌年の収量を確保するためには収穫を一日でも早く終了し、新梢(しんしょう:新しい枝)を発生させて、気温が低下する前にマンゴーの木を元気にさせることが重要です。お礼肥には即効性があり遅効きしない化成肥料を使います。
 マンゴーは強い剪定を行うと花を付けにくくなるので、剪定は必要最低限にとどめます。
 また、マンゴーは枝が上を向いた状態で充実すると新梢が発生します。花芽を誘導するためには最低2ヶ月以上は新梢を発生させないことが重要なため、結果母枝を水平以下に引き下げます。
 
(補足)

 日本では露地栽培により果実を実らせることが難しいため、農家ではビニールハウス栽培を採用しています。
 ここで一般に、ハウス栽培を行う目的が高い気温の確保と思われるかもしれませんが、これは、マンゴーの開花時期が日本の雨季と重なるため、水に弱いマンゴーの花粉を雨から守ることで受粉をさせ、結実させるためです。

 なお、現在では500以上の品種が栽培されているそうです。
 全世界では、インド・メキシコ・フィリピン・タイ・オーストラリア・台湾が主な生産国で、日本では沖縄県・宮崎県・鹿児島県・和歌山県・熊本県で主に栽培されています。
 
4.マンゴーの種類
 
 現在、国産マンゴーの95%程度が「アーウィン」という品種ですが、他にも生産量は僅かですが様々な品種のマンゴーが栽培されています。今後、市場に出回る品種が増加すればマンゴーの味、色、香り等が増え、一層楽しめるフルーツになるものと期待されます。

 現在国内で経済栽培されている品種は、ほとんどが台湾で品種改良されたものです。
 以下に、国内で経済栽培されている代表的な品種を紹介します。
 
アーウィン種 (一般には「アップルマンゴー」と呼ばれています。)

 一般にはアップルマンゴーと呼ばれているものですが、これは俗称で、正式にはアーウィン(愛文)種というものです。国内でのマンゴー栽培の、実に96%がこの品種と言われ、国内で最も普及している主力品種です。宮崎独自ブランド「太陽のタマゴ (「糖度が15度以上」、「重さ350g以上」、「色と形がきれい」という厳しい基準を満たした完熟マンゴー)」もこの品種です。
 収穫は沖縄では6月~8月上旬、完熟すると果皮が赤くなり自然落果します。
 果重は300~500g、長卵形で、果皮は鮮紅色、果肉はオレンジ色で繊維質がほとんどなく、肉質は細かく多汁、糖度は12~15度、酸度は0.21%程度、種子は小さくて薄い特徴があります。耐寒性も他の品種よりも強く、経済栽培に優れている反面、炭疽病に掛かりやすい品種ですが、ハウス栽培により炭疽病の発生率を押さえることが可能となっています。


ミニマンゴー
 これは「アーウィン種」が、小さい実のまま完熟したマンゴーです。50~100g程度と大きさはミニサイズですが、味わいは通常の完熟マンゴー以上と言えるかもしれません。手で皮をむいてそのまま食べられる手軽さが魅力で、また種子も非常に小さいのが特徴です。(商品価値に乏しいため、生産地を除き市場にはほとんど出回りません。)

アーウィン種
ミニマンゴー
 
ペリカンマンゴー(カラバオ種)

 日本で販売されているペリカンマンゴーは主にフィリピン産で、「マニラスーパー」や「イエローマンゴー」、「ゴールデンマンゴー」とも呼ばれますが、正式な品種名は「カラバオ」です。実の形が細長くペリカンのくちばしに似ていることからこのように名付けられています。
 外観は黄色く、他の品種と比べると酸味がやや強いのですが、まったりとした甘味と適度な酸味とがほどよくマッチし、なめらかな舌触りが特徴です。1年を通して出荷されるため価格も手頃です。
ペリカンマンゴー
 
キーツマンゴー

 アーウィンと比べると生産量はかなり少ない品種です。 国内産の「キーツ種(ケイト種)」はおもに沖縄県で栽培されています。( 輸入物では、秋にカリフォルニアで栽培されたものが「グリーンマンゴー」の名で販売されます。)
 収穫期はアーウィン種の出荷が終わる8月~10月頃です。果実は大きく、果重は500g~2000g、長卵形で、果皮は緑色(最近は果皮の一部が赤くなるものもあります)、果肉はオレンジ色で、味が濃厚でクセが少ないのが特徴です。
 完熟しても果皮が赤くならず緑色のままで、また自然落果しないので収穫後追熟させます。収穫後10日から2週間前後が食べ頃となります。色が変わらないので判断が難しいのですが、香りが強くなり少し黄色みがかって実が柔らかくなれば食べ頃です。
糖度は15度、酸度は0.28%程度。繊維が少なめで甘味もたっぷりあり、トロリとした口当たりとともに深みのある味わいがあります。栽培はアーウィンに比べると比較的に容易で、炭疽病にも強い様です。
 アップルマンゴーに比べ、一本の木に多くの実がならず、熟する時期が確認しづらい上に大きくて買い手が少ないため、流通量は少ないです。


イエローキーツマンゴー
 果皮が黄色であること以外は、キーツマンゴーとほぼ同様です。
キーツマンゴー
 
キンコウマンゴー

 台湾高雄県の果樹農家、黄金煌さんにより、キーツ種とカイト種を交配させて作られた品種で、果実の名は自分の名前と同じ金煌(キンコウ)と付けられました。沖縄でもごく僅かですが、経済生産されておられる農家もあります。出荷量はとても少なく市場に出回ることは殆ど有りません。(石垣島では、たまに「ゆらてぃく市場」に出荷されているのを見ることができます。)
 キンコウマンゴーは、マンゴーの中でも最大級で、重さ1.5kg~2kgになります。果皮は熟すると黄色になり、果肉はオレンジ色で繊維がほとんどなく、食感は滑らかでクセがなく、濃厚さはやや控えめのスッキリした味わいなのが特徴です。種子の周りの果肉も、繊維が少なくて食べやすい品種です。糖度は17度でアーウィン種よりも甘く、酸度は0.24%程度です。
 ただ完熟の実はとても痛みやすいため、完熟を待たずして7から8分目まで熟したら収穫し追熟させると良いそうです。
 キンコウマンゴーは病気に強いとされ、中でも特に炭疽病に強いことから農薬散布量はアーウィン種の半分以下にでき、比較的に栽培し易い品種だそうです。沖縄に於いてはアーウィン種の様なハウスを用いることなく、経済栽培できる可能性があります。
キンコウマンゴー
 
玉文6号マンゴー

 1995年に台湾の玉井郷の果樹農家、郭文忠さんにより、キンコウ種とアーウィン種を交配させて出来た品種です。
 玉文種を1~19号まで作り、その中でも玉文6号が一番の優良種として認められ、品種名は玉井郷の「玉」と自分の名前の郭文忠の「文」を取って、玉文6号と命名されました。
 玉文6号はキンコウの品種と同じように病気に強く、特に炭疽病に強いので栽培し易い品種だそうです。果重は600g~2000g、実は細長く、果皮は綺麗な赤色をしていて高級感があります。
 果肉はオレンジ色で繊維がほとんどなく、食感は滑らかで濃厚な味の割にクセがないのが特徴です。糖度は15~18度、酸度はかなり低く0.16%程度です。
玉文6号マンゴー
 
 その他の品種
  (以下の品種は、試験・評価のためや趣味等で栽培されているものが主で、市場にはほとんど出回らないものです。)

  
紅象牙マンゴー
 名前の通り象牙の様に長くて大きい品種です。長さは30cm以上、果重は3~4kgと特大サイズ、果皮はワインレッド色、種子は薄いため可食部分の割合が多く、果肉は繊維が殆ど無いのが特徴です。果汁は多くて甘く、糖度はアーウィン種と同程度の15度前後です。
黒香(ヘイシャン)マンゴー
 病気に強く、果皮は熟しても濃い緑色で果肉も濃い黄色をしています。マンゴー特有の味わいに、ハーブの香りが有り、これまでにない美味しいマンゴーです。あまりに生産量が少なく、あまりに美味しいので生産地以外にはほとんど出回りません。台湾では、幻の品種に属しており,一度食べると忘れられなくなる味だそうです。果重は約500g、長卵形で、繊維がほとんどなく、肉質は細かく多汁、糖度は15.6度、酸度は0.18%程度。収穫は8月です。
土マンゴー
 土マンゴーは、台湾の土地固有(オリジナル)のもの、つまり在来種のマンゴーと言う意味です。表皮が緑色で熟すると微かに黄色くなり、平均重量が約200g、味は濃く糖度はアーウィンよりも遥かに甘いのが特徴です。土マンゴーのシーズンが終わってからアーウィンの収穫が始まります。台湾では、アーウィンマンゴーと1・2位を争うほどの人気がある品種です。在来種のため、放任状態でも実が成るほど生命力は強く、種子は台木用として台湾国内は勿論、日本にも輸出されるほど重宝されてます。
青蜜マンゴー(キヨサムイ種)
 原産地はタイ。果実の特徴としては、長卵形で果重300g~400g、名前の通り青い内から果実は甘味があり美味しく食べられます。熟する前はリンゴの様な食感で、完熟すると表皮が黄色に変わります。果実の表皮が少し黄色になったときが食べ頃で、甘くて味が濃厚で、繊維が殆ど有りません。果実全体が完全に黄色に変色すると完食出来ないほど甘くなります。好みの甘さに合わせて収穫する事が出来る珍しい品種です。
海頓(ハイトゥン)マンゴー
 キーツマンゴーを一回り小さくした感じで、果重の平均は約400g前後、外皮は厚く、糖度は平均で15度、果実の繊維は細かく味は濃厚で多汁、甘くて美味しい品種です。
レイトマンゴー
 タイ原産の品種です。果重は400g前後で、熟すると表皮が黄色くなり、味は甘くて濃厚でとても美味しい品種です
泰文(タイブン)マンゴー
 アーウィンの実生選抜種です。果実の外観はアーウィン種と少し似ていて、綺麗な紅色をしています。果重はアーウィン種よりは一回り小さく、300~400g。糖度はアーウィン種と同じですが酸味は高めで、味は濃厚、微かに味は似てますが全く別品種です。病気に強く、果実に袋を被せなくても綺麗な果実が収穫できるそうです。
杉林(サンリン)マンゴー
 果皮色は綺麗な赤色をしていて、果実の糖度は16.2度、酸度は0.18%、繊維は細かく味は濃厚で酸味が低いので癖がなく食べやすい品種です。平均果重は約650gで、アーウィンよりは大きくなります。果実の尾端が尖っているのが特徴です。
香蜜(コウミツ)マンゴー
 名前の通り濃厚な香りと糖度が15.6度と高く、繊維は細かくて食べ易い品種です。果重は200g~300g前後と果実は小さめですが、濃厚な味わいで、非常に甘くて美味しいのが特徴です。対病性は強く優良種に属します。
レッドキンコウ(赤金煌)マンゴー
 レッドキンコウは、実の皮は赤く、果量が500g~1000g、管理が良ければ1kgを超えることもあります。味は、酸味はやや少ないものの糖度が16~20度と高い(主要品種のアーウィンでは普通12~18度)。
金興(キンシン)マンゴー
 金興マンゴーは、侯金興と言う台湾の農家の名前を取り、「金興」と命名したそうです。この農家のアーウィン種の栽培歴は長く、十数年前のある日偶然にもアーウィン種の木に突然変異が起こり、金興マンゴーが生まれたとの事です。原種の土マンゴーに続き2番目の純台湾原産のマンゴーとなりました。外観、品質、対病共に優れている品種です。
 果実の糖度は15度、酸度は0.19%、形は長楕円で玉文と似ていて色は綺麗な赤色をしています。平均果重は約1350gとアーウィン(平均400g前後)より3倍近い大きい実がなります。
香文(コウブン)マンゴー
 名前の由来は、その名の通り香水の様な強い甘い香りがする事から、その名前が付いたそうです。果重は300g、多肉長卵形で表皮は熟する前は薄い赤色で、熟すると黄色になり、果肉は橙黄色で繊維がほとんどありません。原種マンゴーの様な濃厚な味で、糖度は16度~22度、酸度0.21%、種子は薄く可食部が殆どで、アーウィン種とは違った味わいの品種です。
四季なり蜜マンゴー
 果実の特徴としては、卵形で果重300g~400g、糖度は15度でアーウィンよりも甘く、熟すると表皮が黄色に変わります。温度などの管理条件が整えば年中開花を繰り返す珍しい品種です。
ケシャールマンゴー
 濃い香りと強い甘みが特徴の品種です。食感は滑らかで、高級感漂う気品あるマンゴーです。果重は250g~300g、熟すると外皮が黄色くなり、糖度は18度あります。
バナナマンゴー
 表皮が黄色く形はキンコウマンゴーより細長いことから付いたそうです。果重は300g~400g前後、外見はバナナの様に細長く、味もバナナに少し似ているそうです。
金蜜(キンミツ)マンゴー
 台湾の彰化縣埔心郷の農民、張金泉さんにより、50年前、フィリピンよりマンゴーの種を持ち込んで植え付けた実生苗と原種(土)マンゴーを交配させて出来た品種です。果実の名前の由来は、黄金の様に綺麗な金色の外観と蜂蜜の様な味わいがある事から、金蜜と付けたそうです。
果重は400~500g、果皮は熟すると黄色になり、果肉はオレンジ色で、肉質は繊維がほとんどなく多汁、糖度は21度以上、酸度は0.18%程度でアーウィン種よりもかなり甘 く、しかもアーウィン種よりも炭疽病に強く育てやすいそうです。
慢文(萬文:マンブン)マンゴー
 慢文マンゴーの名は地域によっては萬文マンゴーともいい、ともにこの名前は台湾方言の読みが同じです。農家によって呼び名が違うだけで、品種は同じです。この品種は名前(慢文)の通り、収穫期がアーウィン種の産期が終わる頃に収穫期になるので、その名が付けられたようです。果実はアーウィン種とかなり似ていて外皮は濃い赤色、糖度や味も同様で、平均果重は400gです。
ピーチマンゴー
10月~1月頃にオーストラリアで収穫される「ケンジントン・プライド種」という品種のマンゴーです。赤系のマンゴーの中でも、ほのぼのとした桃のような肌色(黄色とピンクのグラデーション)をしているため、「ピーチマンゴー」と呼ばれています。マンゴー特有の臭いが少なく、滑らかな口当たりと、酸味が少なくてマイルドな甘みたっぷりというのが特徴です。
 
5.マンゴーを買う時の選び方
 
 マンゴーは一般に高級フルーツと認識されているがゆえに、販売する側の管理も行き届いてて、選び方にあまり拘らなくともよいフルーツと言えるでしょう。ただ樹上で完熟したものを収穫してからは、あまり日持ちのするものではないため、アーウィン種のように「完熟マンゴー」と謳われているものについては、生産地から低温輸送され品質低下をしていない状態のものを選ぶようにしましょう。
 また、アーウィン種であれば、ただ赤いだけのマンゴーや、聞き慣れない産地のマンゴーは避けて、メジャーな産地の沖縄・宮崎・鹿児島県産のものを選択するのが無難でしょう。

 甘くて美味しいマンゴーの見分け方は以下のとおりです。(主にアーウィン種について記載します。)
 
美味しいマンゴーの選び方
 
(1) 新鮮な物を選ぶ
 まずは新鮮なマンゴーを選びましょう。収穫後すぐのマンゴーは表面に白くて薄い粉膜(ブルーム)が付いています。これが付いているマンゴーは非常に新鮮と言えます。 これは果物や野菜などの表面にも付いていて、農家の間では、これは害虫から身を守るためだと言われています。しかしこのブルームは収穫後から数時間後にはなくなってしまいますので、通販等で買い求めたような場合はまず見ることはできません。

 次に、一般論として全体にその品種特有の果皮の色(アーウィン種であれば赤色)のついた物の方がよく熟しています。また、果皮にしっとりとツヤがあり、色鮮やかでふっくらとしているもので、触った時に張りがあり、柔らかすぎないものを選びましょう。
 果皮にたるみがあったり、シワのあるものや、黒い斑点があるもの、さわってブヨブヨしたものは古いので避けます。
ブルームの付いたミニマンゴー
 
(2) 色・赤さはあまり気にしない (薄紅色ぐらいがナチュラル)
 アーウィン種については、色の判断目安として薄紅色ぐらいを考えておくと良いでしょう。そして、その色がマンゴー果実全体の70%以上着色しているものが良いでしょう。
 ところで、完熟マンゴーと言えば、真っ赤なイメージが強いかと思いますが、色の赤さは必ずしも甘さには関係しません。なぜならその赤さは人工的に作られている場合があるからです。マンゴーの色に関しては、ボイラーなどを用いて人工的に加温し色付けすることが出来るので、真っ赤なマンゴーが良いとは一概には言えないのです。確かに、赤いと見た目が良いので惑わされがちですが、まずはこの先入観を取り払うことが大事です。
   
(3) 適度な大きさのもの
 アーウィン種の大きさとしては、凡そ、300~400g位のものが良いでしょう。目安としては、果実が手のひらに収まる程度の大きさです。果肉が詰まって甘みものっているものと思われます。
 
(4) ヘタの周りが盛り上がっているもの
 ヘタが一段窪んでいて、その周りが盛り上がっているように見える物(所謂、マンゴーらしい形状の良いもの)を選びましょう。
 
(5) 傷と斑点の少ないもの
 傷などの無いものを選びましょう。果皮に傷があると中の果肉まで ダメージを受けていることがあります。
 
・ 病害虫の被害による傷が少なく、黒い斑点の少ないもの
 ・ 刺し傷、切り傷、挿まれ傷、打撃による傷、擦れ傷の無いもの
 ・ 日焼けの無いもの
 
6.マンゴーの追熟方法
 
 追熟とは、まだ完全には熟れていない果実を一定期間置いておき、甘みや旨みを引き出す処置をとることです。
 マンゴーは追熟するフルーツです。収穫後、常温で置いておくと追熟します。 追熟により、酸味を抑え、味に深みが出て、果肉が柔らかくなります。
 独特の甘い香りが強くなり、指先で軽く押した時に柔らかさを感じれば食べ頃ですが、追熟期間は、品種により異なりますので、注意してください。
 例えば、アーウィン種は、 収穫直後が美味しいと思われがちですが、収穫から3日~5日くらい常温で追熟させてから食べた方が美味しいです。

 【マンゴーの追熟方法】

 ・ マンゴーが箱に入っていれば、箱を開けます。直射日光を避け、15〜20℃くらいで風通しがよく、直射日光の当たらない場所で保存します。
 ・ 早く追熟させたい場合は、りんごと一緒にビニールに入れておきます。りんごが発するエチレンガスで追熟を促すことができます。
 ・ 1日に1回は香りを嗅ぎ、また、柔らかくなりすぎてないか、黒い斑点等が出ていないか確認します。
 ・ もし黒い斑点が出てきたら、それ以上の追熟は避け、斑点箇所を取り除いて食べます。
 
7.マンゴーの保存方法
 
 マンゴーは切って食べる直前まで冷蔵庫には入れないようにします。
 追熟を抑えたい時は8℃位の冷暗所で保存します。7℃が低温の限界で、これより低いと低温障害を起こします。低温障害を起こすと、果実の表面から黒ずみ始め、食味もどんどん悪くなってしまいます。
 完熟果実の保存期間は7~8℃で20日くらいです 。逆にまだ未熟なものはそれより高めの常温で追熟します。
 
 【冷凍保存について】

 マンゴーが沢山あって食べきれないような場合には冷凍保存します。その場合は、種子を取り除き、皮を剥いて、食べやすい(使いやすい)大きさにサイコロ状に切って冷凍します。
 
食べる時は半解凍でシャーベットのように食べるか、スムージーやシャーベットなどに使います。但し、完全に解凍してしまうと柔らかく崩れやすくなりますので「半解凍」がポイントです。
 大ぶりの完熟マンゴーは、香りも風味もとても良いので冷凍すると勿体ないのですが、小ぶりの安めのものなどを冷凍するとよいでしょう。

  

8.マンゴーの食べ方・切り方

 

 マンゴー(アーウィン種)の一般的な切り方を紹介します。

 ① まず、水洗いして汚れなどを洗い流し、軽くふきます。
 ② 真ん中に大きくて平たい楕円形の種が1つ入っていますので、その種子を避けるように種の平らな面と平行になるように包丁を入れカットします。
   この時、種子を切らないように、また、種子に軽く当たる程度まで、出来るだけ実が厚くなるように、ゆっくりと包丁を入れます。
   反対側も同様にカットします。(魚を3枚おろしにする要領で3分割します。)(種子の厚みは1cm程度です。)
 ③ カットした部分を一口サイズにしたいときは、表面に格子状に切り目を入れます。この時、果皮まで切らないようにします。
   この時、もしも手のひらに載せて切るときには気を付けて切りましょう。
   (両サイドの果肉をそのままスプーンですくって食べてもOKです。)
 ④切り目を入れた反対の底の部分を裏から押すように反り返らせると出来上がりです。さいの目状に果肉が出てきて食べやすくなります。
 ⑤ 真ん中の種子の部分については、皮をむいて果肉をそぐように切り取ります。(もしくは、そのままかぶりついて食べてもOKです。)

  
 [マンゴーの切り方の例示]

ヘタ(果梗)の周辺に窪みがあり、この窪みの幅が、種子の厚みです。
ヘタ周辺の窪みの縁を目安に包丁を入れておろすと、種子に包丁を当てることなくカットできます。
中心部にある種子を避け、縦に3枚にカットするとこのようになります。 サイコロ状になるように切り目を入れます。皮を切らないようにしますが、果皮は以外と厚いので、しっかりと切り目を入れても大丈夫です。 果皮の部分を押し出すようにひっくり返すと、果肉がこのように飛び出します。 お皿に盛り付けると出来上がりです。果皮についた果肉をしっかりと削ぎ落とせるスプーンを使うのがお勧めです。 種子のある真ん中の部分は皮をむいて、果肉を削ぎ落とします。
丸ごとかぶり付いてもOKです。
 
 ・ マンゴーの果実は扁平ですが、これは扁平な種子に果肉がくっついていると考えれば、自ずと種子のある方向は分かると思います。
  (幅の狭い面に包丁を入れるのがポイントです。)
 
9.マンゴーの栄養と効能
 
 マンゴーは、βカロテンをはじめビタミン、ミネラル等を多く含み、糖度が高い割にカロリーは抑え目で、栄養バランスの良いフルーツです。
 マンゴーの可食部100gあたりに含まれる栄養成分量は、食物繊維(1.3g)、βカロテン(610μg)、ビタミンE(1.8mg)、ビタミンB1・2・6(0.23mg)、葉酸(84μg)、ナイアシン(0.7mg)、パントテン酸(0.22mg),ビタミンC(20mg)、カリウム(170mg)、その他ミネラル類(40.48mg)となっています。
  【参考データ:文部科学省 五訂増補日本食品標準成分表 果実類】

 マンゴーの成分で特徴的なものとしては、体内でビタミンA(レチノール)に変わるβカロテンの量が多いことがあげられます。 果肉の濃いオレンジ色は、βカロテンの色で、含まれているβカロテンの量は、含有量の多いビワの2倍、柿の15倍です。このβカロテンは、細胞の老化を抑える抗酸化作用があるので肌や粘膜の健康維持やがん予防などに効果が期待できそうです。
 この他にも、貧血予防によいとされる「葉酸」や、老化防止や整腸作用のある食物繊維も多めです。また、ナトリウムの排出を促進するカリウムも比較的多く、高血圧や動脈硬化、脳梗塞や心筋梗塞などの予防にも期待できそうです。
 
10.マンゴーの価格について
 
 外国産(輸入)のマンゴーに比べて、国産のマンゴーは値段が高いのですが、なぜでしょうか?

 国内で栽培されている品種のマンゴーは台湾でも栽培されています。(と言うよりは、むしろ台湾で栽培されていたものを日本国内に持ち込み栽培するようになったと表現する方が正しいかもしれません。) 日本国内と違って、台湾ではハウスではなく大きな農園で露地栽培されています。
 では、なぜ国内ではわざわざ手間暇かけてハウス栽培をしているのでしょうか?

 その理由は、沖縄では雨に濡らさないためです。沖縄以北については、これに保温(加温)するという理由もあります。
 マンゴの花粉は水に弱く、花が咲く時期に雨が降ると受粉ができなくなります。そうすると結実(着果)することができません。
 また、炭疽病も理由の1つです。炭疽病は比較的に高温多湿を好み、風雨などにより伝染します。その為、屋外で栽培する作物では発生率が高くなります。
 このような理由から、梅雨に代表されるように雨のよく降る日本では雨よけとしてハウスが必要となるのです。
 一方で、台湾には雨季と乾季があり、マンゴーは乾季のうちに花が咲き受粉してしまうので露地栽培でも問題ないということなのです。

 ところで、ハウスの中でマンゴーを育てるということは、とても手がかかります。
 マンゴーの木はハウスの中では作業性等を考慮して、枝を剪定・誘引してコンパクトに、かつ効率よく光が当り、光合成できるような木作りをしなければなりません。放っておくと、樹高は10m以上にもなるマンゴーですので、地植えばかりでなく鉢植えによる栽培方法も行われています。
 また、花が咲けば花の自重で垂れ下がらないように紐で吊って、太陽の光をたくさん浴びるようにします。また、実が大きくなれば一つひとつ紐で吊ったり、収穫期になれば紙袋かけをしたりネットで吊るようなこともします。
 このように、国内のマンゴーは非常に手間がかかって生産されているのです。

 勿論、栽培をするにはハウス建設への投資もまとまって必要となりますし、加温する場合は加温装置等への設備投資や燃料代も必要となります。このような理由もあって、どうしても国産マンゴーは値段が高くなってしまうのです。

 
 (引用) 沖縄県農業研究センターHP(沖縄県)、農林水産統計(農林水産省)、文部科学省 五訂増補日本食品標準成分表
 

 Page Topへ戻る     八重山豆辞典 に戻る      HOME へ戻る


Copyright (c) 2008.8 yaeyama-zephyr

写真の無断転載・使用を禁じます。利用等をご希望される場合はメールでご連絡下さい。