小浜島の結願祭 2018 (その1)  作成 2019.01.19

概要

 小浜島の結願祭(キチィガン)は、豊年祭、種子取祭とならぶ島の三大行事の一つで、その年一年の豊作と健康、祈願成就に感謝し、来夏世の五穀豊穣と無病息災を祈願する伝統行事です。平成19年(2007年)3月に国の重要無形民俗文化財に指定されました。

 結願祭の開催日程は、例年、旧暦8月の己亥(つちのとゐ)の日から、庚子(かのえね)、辛丑(かのとうし)の連続する3日間が多いようです。結願祭は、初日を「スクミ(仕込み)」、2日目を「ショウニツ(正日)」、3日目を」「トゥンドミ(締めくくり)」と言い、スクミで奉納芸能の総稽古(リハーサル)が行われ、ショウニツで伝統芸能の神前奉納が行われます。

 2018年(平成30年)の結願祭は11月3日から開催され、結願祭のメインとなる2日目のショウニツは11月4日、嘉保根御嶽(カフニワン)のザー(神庭)で執り行われました。ショウニツでは棒術や獅子舞いなどの庭の芸能、舞踊やキョンギン(狂言)などの舞台の芸能、合わせて20数演目奉納されました。
 (演目リストが未入手で [そもそもプログラム自体を見ることがなく]、また私は舞踊等にも明るくありません。写真の演目名等は私の分かる範囲内で記載しますが、いくつかは特定が困難なものもあります。このためもしかすると間違っているものもあるかもしれません。その場合は悪しからず。)

 結願祭(ショウニツ)では朝9時から夕方16時過ぎまでの7時間以上もの間、伝統芸能が演じられましたが、一度に全てを紹介するのは困難なので4回に分けて紹介します。情緒溢れる島の郷土芸能を楽しんで頂ければと思います。 


小浜島の『結願祭』は、元は「節」と「結願」の2つの行事が、明治初期頃1つになったといわれています。毎年、小浜島の結願祭が開催される日には、隣の西表島では「節祭」が執り行われます。(このためどちらの祭りを鑑賞すべきか、毎年悩みます。)
小浜島はウヤムラ(親村)である北村(メイラクヤー)とファームラ(子村)である南村(フルクジュヤー)のふたつの集落で構成される双分制となっていて、北村と南村が交互に集落の伝統芸能を神前奉納します。
  (良い意味で2つの村が芸を競ってきた故に、こうした伝統芸能が守られてきたものと考えます。これは竹富島の種子取祭も同様と考えます。)

■結願祭を見学する時の注意(留意)事項

 (1) 結願祭は神事です。そのことをよく理解した行動をとりましょう。
 (2) 基本的に立ち見となります。
   但し途中の舞台設営以降で空きがあればブルーシートに座って鑑賞することが可能です。
 (3) 結願祭の写真やビデオの撮影は可能です。但し狭い場所ですのでお互い譲り合って撮影しましょう。
 (4) 嘉保根御獄は小浜島の人々にとってはとても大切な聖地です。ゴミ等は必ず持ち帰って下さい。
 (5) 会場においては飲食の販売はありません。昼食は各自で持参して下さい。
 (6) 港から会場までの間は、結願祭のための専用送迎バスはありません。少々距離がありますが基本は歩くことになります。


1.ザーマーリィ(座廻り)の様子 (2018年11月4日)

 ショウニツにはミーラク(ミロク:弥勒)と福禄寿が人々を引き連れて集落内を練り歩き、嘉保根御嶽に到着します。
 午前9時過ぎ、北村がミーラクを先頭に、芸能出演者一同がザー(神庭)を一周し顔見せを行うザーマーリィ(座マール:座廻り)から結願祭が始まります。
 ミーラクは、袖持ちの女の子、旗持ちの男の子、美しく着飾った島人たちを引き連れて、一歩一歩ゆっくりとザーのなかを歩みます。ザーマーリィは、「弥勒節(みるくぶし)」の唄声と三線の音色の中で行われます。
 

小浜島の結願祭は毎年、御嶽の蝉がものすごく鳴く中で行われることで知られていますが、2018年も蝉しぐれの中でスタートしました。

 (1) 北村のザーマーリィ

庭の芸能はミーラクを先頭にしたザーマーリィから始まります。
ザーには天幕が張り巡らされ、日除け(雨天時には雨避け)の役目を果たしています。
    ミーラクは子供たちを引き連れ登場します。
行列は拝殿の前を一周し退場します。    
その後、太鼓が奉納されます。
続いて棒(棒術)や獅子舞が奉納されます。 これにより座(ザー)が清められます。
 
獅子の登場です。  

 (2) 南村のザーマーリィ

南村のフクルクジュ(福禄寿)を先頭にした行列によるザーマーリィです。
     
 
行列はミーラク同様に拝殿の前を一周し退場します。
ここからは太鼓の奉納です。
棒(棒術)や獅子舞が奉納されます。    
 
     
獅子の奉納です 北村と南村とでは獅子の姿もかなり異なります。
 
その後の棒の奉納。棒では、なぎなた(マイヌヤラ)や山刀(ヤマガラス)や「三人棒」などが披露されました。    
 
     
 
    これは赤いふんどし姿で大きな竹棒を持った3人が演じるユーモラスな「三人棒」です。
 
この棒術は他の島では見られないものです。    
 
     
 
   
 
   

2.舞台設営や拝礼などの様子

ザーマーリィに続き、棒術が奉納されると、ザーに舞台が作られます。
間口二間、奥行き二間半の舞台が嘉保根御嶽(カフニワン)の拝所(拝殿:イビ方向)に向かって設置されます。
約40分ほどで舞台が完成すると、ブルーシートの敷かれた客席に人々も移動します。皆が座ると、責任者の方の合図で神司も含め全員で御嶽の祭壇(神様:イビ)の方を向き拝礼します。

舞台の設営中。これはベースの木枠を組んでいるところ。 木枠の上に板を敷き並べます。
更にその上にゴザなどを敷いて舞台ができあがります。
周囲にはブルーシートが敷かれ観客席が作られます。
観客席が出来上がると、責任者の方の挨拶が行われ舞台の芸能がスタートします。

3.舞台芸能の様子

 (1) 北村の舞台芸能

 最初にミーラクが舞台に登場し、引き連れた供の者(演者)が、御前風、赤田主、オカタ、マミドーマ、稲しり節、小浜節、馬武者と、座ぴらきとされる演技を次々に演じていきます。

舞台の芸能は、北村の「ミーラク」の登場から始まります。
ミーラクに従い、演者は舞台の上を周ります。   その後、ミーラクは舞台の端に鎮座されます。演者も舞台の端を取り囲むように座り、順に演じます。
 
     
御膳風(グジンフー)
     
 
     
赤田主
 
オカタ」?    
 
     
マミドーマ」は、八重山地方を代表する農民踊りの一つで、鎌や鍬などの農具を手に働く女性を讃える踊りだとされています。 竹富島のマミドーマとは歌詞も出だしも異なります。
 
     
 
     
稲摺り節(いにしりぶし)   木臼などを使って籾を籾殻と玄米に分ける様子を表現しています。
 
     
 
     
小浜島を代表する舞踊・「小浜節(くもーぶし)  
 
八重山地方の正装であるスディナ・カカン姿に四つ竹を持ちゆったりと踊ります。
 
子どもたちが演じる「馬武者(ンーマヌシャ)
 
     
北村の演技が終わりミーラクを先頭に退場します。  
 

 (2) 南村の舞台芸能

 最初に福禄寿が舞台に登場し、引き連れた供の者(演者)が、赤馬節、夜雨節、稲しり節、めでたい節、かたみ節、前の浜節、馬武者とが、座ぴらきとされる演技を次々に演じていきます。

南村の舞台の芸能は、「福禄寿」の登場から始まります。  
 
福禄寿は供の演者をつれてザーを周ります。   その後、福禄寿は舞台の端に鎮座されます。演者も舞台の端を取り囲むように座り、順に演じます。
 
     
 赤馬節    
 
     
 
     
夜雨節    
 
     
稲摺り節
     
 
     
 めでたい節」?    
 
     
かたみ節」?    
 
     
前の浜節」?  
 
     
 
     
馬武者(ンーマヌシャ)   竹富島と違って小浜島では二人の子供たちが演じます。
 
  
     
 
   
南村の演技が終わり福禄寿を先頭に退場します。
 

続きは、『小浜島の結願祭 2018 (その2)』 をご覧下さい。

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