西表島・祖納の節祭 2016  更新 2021.02.27

今回は地図の修正を行いました。

1.節祭概要

 国の重要無形民俗文化財に指定され、500年の歴史があるといわれる西表島祖納と干立集落の節祭(シチ)が、2016年11月13日から15日の3日間行われました。
 祖納と干立は西表島の中でも最も古い集落の一つですが、節祭は農民の正月とされ、これまでの1年間の豊作に対する感謝と翌年の五穀豊穣、住民・集落の繁栄、無病息災が祈願される西表島内最大の伝統行事です。祭りには地元住民は勿論のこと、多くの地元出身者が里帰りをして参加して、祭りを盛り上げます。

 丁度今年は、1991年に文化財指定を受けてから25周年の節目にあたる年でもあり、それを祝う来賓の方々や、大勢の観光客が会場に訪れていました。
 ここでは、祖納集落の節祭2日目(11月14日)の世乞い(ユークイ)の様子を紹介します。

 節祭(シチ)とは、季節の折り目や年の折り目を表す祭りで、その年の豊作の感謝と五穀豊穣、健康と繁栄を祈願する祭りで、八重山の各地で行われています。
 
   祖納の節祭は3日間執り行われますが、
 1日目がトゥシヌユー(年の夜=大晦日)と呼ばれ、翌日からの準備などが
 2日目が新年の祝いである世乞い(ユークイ)で、
      儀式や様々な奉納芸能が「船元の御座(前泊海岸)」などで披露され、
 3日目のツヅミでは水恩感謝の大平井戸儀式が行われます。

 なかでも2日目は、多くの観光客が見学に訪れ賑わいます。

移動にあたっての注意事項等

 節祭2日目当日には、割安な石垣⇔西表島(上原)間の特別鑑賞セット券が販売されます。販売会社・価格等は開催日間際の八重山毎日新聞等で確認して下さい。但し、これは通常の定期船を利用するもので、臨時便が運航されるわけではありません。
西表島上原港までは石垣港から高速船で約40〜50分、フェリーで約1時間40分〜2時間10分かかります。

 節祭が開催される祖納・干立集落は上原港から約8km、車で約20分かかります。
安栄観光フェリーや 八重山観光フェリーを利用すると、船の発着に合わせ無料の送迎バス(定期連絡バス)が運行されていますので、これを利用すれば日帰り観光ができます。いずれも石垣島の離島ターミナルで乗船券を購入する際に必ず連絡バス利用券をもらって下さい。
 安栄観光ならびに八重山観光フェリーの無料送迎バス運行時刻表は、それぞれのHPを参照して下さい。

安栄観光の『西表島「節祭」セット券』
2016年のもの
   なお、・天候不順により石垣⇔上原航路が欠航した場合には、石垣⇔大原港(西表島)を利用することとなります。
 その際 「送迎バス」にて大原→上原〜白浜間(西表西部地区)を利用する場合は、石垣⇔上原間の乗船券を買い求めることとなります(送迎バス利用券が付いています)。
 上原航路欠航時の安栄観光ならびに八重山観光フェリーの無料送迎バス運行時刻表は、それぞれのHPを参照して下さい。
 いずれも、石垣⇔大原間の乗船券だけでは、この大原→上原〜白浜間の送迎バスを利用することはできませんので注意して下さい。

 干立・祖納間は約1km、徒歩で約15分かかります。年によっては両地区の節祭を見学 (祖納地区の節祭が終わってから歩いて干立地区に移動)することができます。

[その他]
 当日会場ではご祝儀を包むと地元婦人会の方たちが作られた折り(お弁当)と飲み物が提供されます。この場合、お昼過ぎには無料で牛汁がふるまわれます。なお、会場周辺に飲食店はありませんので、注意して下さい。
 
2.祖納の節祭のタイムスケジュール

2016年の節祭2日目のタイムスケジユール(日程表)は以下の通りです。
なお、スケジュールは潮の満ち引きにより変わるため、毎年一定ではありません。
因みに11月14日は旧暦10月15日、、祖納・前泊海岸の干潮は12:40、満潮は18:38でした。 

時刻 行事内容 節祭2日目のタイムスケジユール表        
05:00   一番ドラで「節祭」を告げる
06:00  旗頭お興し
10:30  スリズ集合
11:00  スリズ儀式(男子芸人)
11:15  一番旗頭出発
11:20  スリズ儀式(ミリク・アンガー)
11:40  二番旗頭出発・三番旗頭出発
12:00  舟浮かべ
12:05  男子芸人入場・ミリク・アンガー入場
 館長挨拶・チジビ祭祀・感謝状贈呈・来賓祝辞・乾杯の音頭
13:00  狂言・棒芸  ミリクトゥリムチ
14:00  奉納舞踊(祖納岳節・西表口説・丸間盆山節)
14:20  婦人アンガー  ミリクトゥリムチ
15:00  世乞い(爬竜舟)
15:40  男子アンガー
16:20  獅子舞い
16:30  閉会
17:00  スリズトゥズミ

3.祖納の節祭の開催場所(地図)

4.祖納の節祭2016の様子
 
皆がスリズ(祖納公民館)に集合します。 前庭の横には旗頭が立てられています。
 
スリズ儀式(男子芸人)の様子です。 ユークイは、メイン行事であるフニクイ(船漕ぎ)が行えるミチスー(満潮時刻)を逆算して始められます。
  男子芸人のスリズ儀式が終わると、一番旗(ガヒャ)が出発します。(写真無し)
 
スリズ儀式(ミリク・アンガー)の様子です。 続いてミリク起こしの儀が始まります。写真はミリク役に選ばれた島人です。
世話役の方が黄布を頭からすっぽりとかぶせ、それを取ると島人がミリク様になります。これは「人が神になった瞬間」です。
以降、ひたすら「神」として振る舞い続けられます。このように人がミリク神に変身するところが見られるのは祖納・節祭の特徴の一つです。
もう一つの祖納・節祭のミリク神の特徴としては、ミリク神が人前に姿を現している時間がとても長いことがあげられます。他集落では概ね10〜15分ですが、祖納・節祭に現れるミリク神は、世乞い行事の最初から最後まで、約6時間にも及びます。
     
ミリク役に選ばれた島人はユークイの間、「神」であるため、話すことはもちろん、水を飲むことも、食べることも、トイレに行くことも許されないそうです。
 
旗頭を先頭に、集落内を歌い練り歩き、船元の御座へ行列が進みます。これは二番旗(シバカキ)の出発の様子です。 ミリク様を先頭としたミリク行列です。
 行列は集落内を進み前泊海岸へ移動します。  
三番旗(ナギナタ)です。   この後には、黒装束のフダチミを先頭とした婦人アンガー行列が続きます。
 
     
三番旗の後には、女性二人が扮する頭から足元まで黒装束の「フダチミ」が歩きます。
フダチミは、「慶来慶田城用緒の娘という説」、「本土からの船が遭難した際に船から降りてきた女性行列の再現という説」、「誘拐されて戻って来た女性が顔を見せられるような状態ではなかったから隠しているという説」、「嫁ぐ女性を守るためだという説」、など諸説いろいろあるようです。
ミリク神より古い歴史を持つとも言われるフダチミですが、他では見ることのできない神秘的で不思議な姿です。
 
節祭は主にこの「前泊御嶽」の前の浜で行われます。 観客席です。
 
     
 
一行が「船元の御座」の前に到着します。
※世乞い(ユークイ)の一日だけ前泊海岸浜のことを「船元の御座」と呼びます。
ミリク行列も到着しました。
 
「舟浮かべ」です。
 
一行が船元の御座に到着すると一番旗を先頭に男子の船子の櫂踊り「ヤフヌティ」が始まります。 ヤフヌティとは男子芸人による「船漕ぎの櫓」を持って行われる演舞です。
続いて二番旗を先頭に「弥勒節」にてミリク行列が会場に現れます。    ミリク様が浜を向いて着座します。後ろは「前泊御嶽」です。
 
     
 
三番旗を先頭に「ユナハ節」にて女性のアンガー行列が入場します。アンガー行列の先頭は黒装束のフダチミです。 フダチミが祭りで登場するのは祖納だけです。この後、アンガー行列はミリク様の隣に着座します。
 
館長挨拶の後、チジビ祭祀・感謝状贈呈・来賓祝辞と続きます。 その後に、乾杯の音頭。
 
 
砂浜では、櫂をマタに挟んで島言葉で口上を述べる「ルッボー」が演じられます。 「船元の御座」の遠景。左手が演者です。
こちらは、「リッポー」と呼ばれる男子狂言。  こちらは「キッポー」(?)
 
次は「棒芸」が行われます。最初は子供たちによる奉納芸です。
    
「3人棒」です。  
 
 こちらは笠をつかった棒術(?)    
 
 
桟敷に着席されておられるミリク様ですが、時折、椅子から立ち上がり、ユガフ(世果報)を招き入れるように「弥勒節」に合わせてゆったりと舞い踊られます。
 
桟敷では奉納舞踊が演じられます。   艶やかな衣装は弥勒世果報(ミルクユガフ)をもたらすとされています。
   
これは祖納の祝舞「まるま盆山節」。
頭の上に乗せているのは白鷺(シラサギ)です。
   
 
 

フダチミを先頭とした「シチアンガー」とも言われる婦人アンガーの巻き踊りです。

旗頭の間に二重の円陣をつくり、内円ではフダチミと太鼓を叩いて音頭取りをする二人が時計回りに、外円では他のアンガーたちが反時計周りに踊ります。
  

節祭の行われている「船元の御座(前泊海岸)」の遠景。

  
2度目のミリク様の舞いです。
  
次のフニクイヌ(船漕ぎ)儀式は節祭のメイン行事です。
男子芸人が紅白に分かれ、海の彼方から五穀豊穣を運んでくるために行われるもので、沖合の「まるま盆山」」と「船元の御座」との間を三往復します。
1回目は「世乞い行事」です。はるか彼方の海神様からウシマユー(大島世)、ミリクユー(弥勒世)を乞い、祈願歌を歌いながら沖に漕ぎ出し、「豊穣・豊漁」を持ち帰ります。
まずは乗る舟の抽選を行ないます。  
   
まずは神歌を唄いながら漕ぐ神漕で1往復します。    
 
  
「まるま盆山」」の手前を進み 浮きをターンして戻ってきます。 
2回目は一転、全力で漕ぐ「舟漕ぎ競漕」となります。まずは「まるま盆山」の手前の海を漕ぎます。
 
 
  女性たちは浜辺で嘉利(ガーリー)を踊り、手招きしながら声援を送ります。ほかの男子芸人たちも一緒に手を上げて、「サァサァサァサァ」と掛け声をかけて応援します。
いよいよここからが本格競漕。 舟を降りた船子が旗を周ります。
   
そして舟に飛び乗り全力で漕ぎ出します。   最後は「まるま盆山」の向こう側(裏側)を周って戻ってきます。紅組は白組にかなりの差をつけられました。 
   
舟が浜に着くと船子はいち早くかけ上がります。   そして櫂ににまたがり神様に報告します。今年の競漕で勝ったのは白組です。
 
勝ったの白組は浜に舟を上げます。   遅れて到着した紅組も櫂にまたがり神様に報告します。
   
 
祖納の節祭の最大儀式であるフニクイが行われた後、私は隣の干立集落の節祭会場のほうに移動しました。

祖納の節祭はこの後、男子アンガー巻き踊り、獅子舞による厄祓いが行われ、その後、 万歳三唱の後、「弥勒節」にて一番旗を先頭に集落内を行列し、皆でスリズ(公民館)に戻りました。その後、ミリク様は仮面を外され、神から再び人に戻られました。

以上をもって祖納・節祭の2日目の主要行事が終了しました。
 

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