西表島・干立の節祭 2019  作成 2019.11.23

1.節祭概要

 国の重要無形民俗文化財に指定され、500年の歴史があるといわれる西表島・干立(星立)と祖納集落の節祭(シチ)が、2019年10月29日から31日の3日間行われました。
 干立と祖納は西表島の中でも最も古い集落の一つですが、節祭は農民の正月とされ、これまでの1年間の豊作に対する感謝と翌年の五穀豊穣、住民・集落の繁栄、無病息災が祈願される西表島内最大の伝統行事です。祭りには地元住民は勿論のこと、多くの地元出身者が里帰りをして参加して、祭りを盛り上げます。

 ここでは、干立集落の節祭2日目(10月30日)のユークイの様子を紹介します。

 節祭(シチ)とは、季節の折り目や年の折り目(節目)を意味し、海の彼方より幸を迎え入れる行事で、その年の豊作の感謝と五穀豊穣、健康と繁栄を祈願する祭りで、八重山の各地で行われています。
 毎年旧暦10月前後の己亥(つちのとゐ)の日から3日間行われます。
 
   干立の節祭は3日間執り行われますが、
 1日目がトゥシヌユー(年の夜=大晦日)と呼ばれ、翌日からの準備などが
 2日目が新年の祝いである世乞い(ユークイ:神を迎える神事)で、
      儀式や様々な奉納芸能が「前の浜」や「干立御嶽」などで披露され、
 3日目のツヅミではムトゥウガンの近くのウイヌカーで水恩感謝の儀式が行われます。
 このなかの2日目の世乞い(ユークイ)には、多くの観光客が見学にも訪れ賑わいます。


 節祭は、一年間の諸々の行事(結願祭などが含まれます)を総合して、干立部落の前の浜(洗い清められた砂浜)と干立御嶽内(フタデウガン)で挙行したのが起源となっているそうです。

石垣島からの、および西表島内の移動にあたっての注意事項等

 節祭2日目当日には、割安な石垣⇔西表島(上原)間の特別鑑賞セット券が販売されます。販売会社・価格等は開催日間際の八重山毎日新聞等で確認して下さい。但し、これは通常の定期船を利用するもので、臨時便が運航されるわけではありません。
西表島上原港までは石垣港から高速船で約40〜50分、フェリーで約1時間40分〜2時間10分かかります。

 節祭が開催される干立・祖納集落は上原港から約8km、車で約20分かかります。
安栄観光フェリーや 八重山観光フェリーを利用すると、船の発着に合わせ無料の送迎バス(定期連絡バス)が運行されていますので、これを利用すれば日帰り観光ができます。いずれも石垣島の離島ターミナルで乗船券を購入する際に必ず連絡バス利用券をもらって下さい。
 安栄観光ならびに八重山観光フェリーの無料送迎バス運行時刻表は、それぞれのHPを参照して下さい。

安栄観光の『西表島「節祭」セット券』
これは2016年のもの
   なお、・天候不順により石垣⇔上原航路が欠航した場合には、石垣⇔大原航路を利用することとなります。
 その際 「送迎バス」にて大原→上原〜白浜間(西表西部地区)を利用する場合は、石垣⇔上原間の乗船券を買い求めることとなります(送迎バス利用券が付いています)。
 上原航路欠航時の安栄観光ならびに八重山観光フェリーの無料送迎バス運行時刻表は、それぞれのHPを参照して下さい。
 いずれも、石垣⇔大原間の乗船券だけでは、この大原→上原〜白浜間の送迎バスを利用することはできませんので注意して下さい。

 干立・祖納間は約1km、徒歩で約15分かかります。年によっては(一方の節祭が終わってから隣の地区に移動して)両集落の節祭を見学できる場合もあります。

[その他]
 なお、干立集落の会場周辺に商店や飲食店はありませんので、注意して下さい。

 必要ならば、前もって離島ターミナルなどで食料を調達しておくことをお勧めします。

2.干立の節祭のタイムスケジュール


 2019年の節祭2日目[世願い(ユークイ)]のタイムスケジユール(日程表)は以下の通りでした。
 なお、スケジュールは潮の満ち引きにより変わるため、毎年一定ではありません。(因みに2019年10月30日は旧暦10月3日、西表の満潮は9:05でした。) 加えて予定はあっても実際に開始される時間はその日の状況によって大きく変わる場合もありますのでご注意下さい。

時刻  行事内容
5:00   ドラ打ち
7:15  船抽選
7:45  公民館出発(旗頭)
8:00  ヤフヌティ
8:30  舟漕ぎ
 10:30  式典・祝宴・奉納芸能
    一番狂言の天上天拝
    アンガー踊り、ダードゥリッダー
    二番狂言:川平早使い
    三番狂言:牛追い狂言
    棒術
    ミリク加那志
    オホホ
    獅子舞
12:30  トゥリムトゥへ移動(フタベ家・カイレ家)
14:30  スリズ(公民館)・ツヅミ

【参考】
 西表島・祖納集落でも同じ日に節祭が行われます。
 行事日程が重なるため、残念ながら1日で干立・祖納の双方の節祭(ユークイ)の全ての行事(奉納芸能)を見ることはまずできません。(一部を見ることは可能です。) ユークイの日の双方の奉納芸能を全て見るには最低でも2年はかかります。
 なお、節祭りが開催される日は小浜島の結願祭の開催日とも重なります。

3.干立の節祭の開催場所(地図)




4.干立の節祭2019の様子
 
 2019年の干立集落の節祭2日目(10月30日)当日は、新北風(ミーニシ)が強く吹き海上の波高が高かったため上原航路は欠航となりました。このため石垣港を朝7:10発の大原航路&連絡バス乗り継ぎで干立に向かうこととなりました。
 高速船は大原港に7:50頃着、連絡バスは8:00に出発、約1時間乗車し干立集落には9:00頃の到着となりました。
 (また、天気も午前中は小雨が降ったり止んだりの生憎の天気となりました。)

 残念ながら干立集落に到着する前に「前の浜」でのパーリャ(舟漕ぎ競漕)はほぼ終了していて、結局その様子を見学をすることはできませんでした。ほぼ満潮時間に合わせて行われるので、数年ぶりの早朝の開催となったようです。
 ニライカナイ(海の彼方)から世果報(幸せ)をもたらすために行われるというパーリャは、2槽の船で2回競われます。2回目の競漕はドラの音とともに終わりを告げ、参加者全員でガーリーを舞って締めくくられますが、到着時には丁度それか終わったところでした。
 このため2019年の干立集落の節祭は、それ以降の「式典・祝宴・奉納芸能」を見学することとなりました。
 以下、その内容を紹介します。

バスから降りて急いで浜へと向かいましたが…。 浜に到着した時には、丁度パーリャ(舟漕ぎ競漕)が終わった時でした。残念!
2本の旗頭が立てられています。旗文字は「永光」と「東」。 浜の前に置かれた御神酒?
パーリャ(舟漕ぎ競漕)に使われた舟。 泡盛(八重泉・請福)の記念ボトルも販売されていました。
     
公民館長の挨拶。時刻は10時40分過ぎです。 感謝状(表彰状かも?)の贈呈。
竹富町長の来賓祝辞。 確か、在石垣郷友会長(?)による乾杯。
 
一番狂言(キョンゲン)の天上天拝(ティンチョウティンパイ)。 時刻は11時過ぎです。
 
 
祭りの主役とされるトゥーチ(船頭)の4人を中心に、その周りを取り囲むアンガーの巻き踊り(アンガー踊り)が披露されます。 アンガー踊りは独特な歌と仕草です。
4名の男女のトゥーチが時計回りに太鼓を鳴らしながら歌い、それに合わせて、大勢のアンガー達が反時計回りにゆっくりと演舞を行います。
このアンガー踊りはかなり長時間にわたって演じられます。
 
4名の男女のトゥーチ。
巻き踊りの最後には2人のアンガーが飛び跳ねる、ダードゥリッダーという干立集落独特の舞で締めくくられます。
どことなく中国的な踊りのように思われます。
 
二番狂言の早使い(ハヤチカイ)  馬にまたがった格好で演じられます。両足に挟んだ櫂には馬の絵が描かれています。
続いて川平早使い(カビラハヤチカイ)
 
三番狂言の牛追い狂言
 
 
次は「棒芸」が行われます。最初は子供たちによる奉納芸です。 まずは槍同士の戦い。
続いては棒同士の戦い。
こちらは「3人棒」です。
子ども達の演技ですが、相当迫力があります。かなり練習したものと思われます。
 
ここからは大人による演技。まずは棒同士の戦い。
続いて棒同士の戦い。
これも棒同士の戦い。
これは鎌と薙刀の戦い。

かなり迫力のある演技です。
 
豊穣をもたらすと言われるミリク加那志が「弥勒節」に合わせてゆったりと登場します。時刻は12時25分頃です。 ミリク様の袖持ちが小槍を持った少年(他地区は少女)であり、行列の後尾にも槍持ちの若衆が付き従っているところから、外敵から集落を守る姿勢を示すもので、後で登場するオホホの存在と関連があるという説もあります。
ここのミリク様は独特な顔だちです。「苦労と切なさからにじみ出る笑顔」という表現もあるようです。
行列が続きます。
 
ミリク様の行列が境内を回っているところで突然、「オーホホホホホ…」という甲高い笑い声が会場に響き渡りオホホが登場します。時刻は12時30分過ぎです。 オホホは背中に大きな袋をしょっています。
「オホホ」は目の彫りが深く、高い鼻に長いヒゲをたくわえ、異国人風のブーツをはいた奇妙な格好をしています。
言葉が通じず明らかに島の人とは違う風貌から、一説には、昔、島に流れ着いた外国人(西洋人)を表わしているのでは?、とも言われています。これはミリク様との2ショット。
行列や観客の女性にしきりに取り入ろうとするような仕草を繰り返します。
 
腰を振るユニークな仕草で境内をまわります。
子どもや女性を手招きして誘い、会場から笑いを誘います。
「オホホ」は、『この村の豊かさは、お金ではなく子孫繁栄である』ということを現しているそうです。また「オホホ」は、お金よりも子供が大切だと教え、一致団結すれば、たとえ異国の人でも怖くはない、ということを伝える芸能になったという説もあるそうです。
「オホホ」は背中にしょった袋から札束を見せびらかし、それを投げると子どもたちは大喜びで拾い集めます。この「オホホ」がばらまくお札はとてもよくできた「一億円札」です。 お金を見せつけ子どもや女性たちを誘い、連れ去ろうとしますが相手にされません。「オホホ」は、人心をたぶらかす悪い神様だから相手をしてはいけないと言われているようです。
最後は女性に引き連られ退場します。
 
続いては獅子舞です。時刻は12時40分頃です。
この獅子舞が最後の奉納芸能です。
一旦、退場します。 笛の演奏者達。節祭では基本的に三線は使われません。
 
獅子の再登場。干立には獅子が1頭しかいません。 一人の女の子が中央に出てきます。
女の子と遊びます。このような獅子舞は他の地域では見たことがありません。  
 
傍からは一緒に踊っているようにも見えます。 勿論、獅子が子供の頭を噛むようなシーンもあります。
 
公民館長の閉会の挨拶。時刻は12時50分過ぎです。 旗頭を先頭にトゥリムトゥ[*]へ移動します。
ここは「前ぬ浜」の防波堤です。時刻は13時10分過ぎです。 祭りも終わり静かな「前ぬ浜」。
 
(注) トゥリムトゥ[*]
 トゥリムトゥは、干立村が今の場所にできたときに、 最初に住みはじめた家のことだそうで、「フタベ家」「・カイレ家」が干立村のトゥリムトゥです。節祭や豊年祭では、トゥリムトゥへ行き、祖先に対しての奉納芸能や儀式・礼拝を行ないます。
 

※ この後、私は隣の祖納集落で行われている節祭会場の方に徒歩で移動しました。

 

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