鳩間島の豊年祭2023  作成 2024.02.04

 豊年祭は、穀物の収穫を終えた後、神への豊作の感謝と、来夏世(クナツユー、クナチィユー)の豊作祈願を行う祭です。
 別名「瑠璃の島」と呼ばれる鳩間島の豊年祭は、毎年、旧暦6月の壬の日から3日間開催され(新暦では7月下旬頃から8月上旬頃の間)、鳩間島ではこれが年間を通じて島最大の祭りとなっています。普段は静かな島も、祭りの日は島外に住む島出身者や観光客で賑わいます。

 豊年祭の初日はユードゥーシ(夜通し)と呼ばれ、島内で第一の聖地とされる友利御獄で、夜から早朝にかけ夜通しで神に祈りを捧げます。(いわゆる他地区のオンプールに該当するものです。)
 2日目はトゥーピン(当日)と呼ばれ、島内の各御獄で祈願を行った後、「民宿いだふに」前の「桟敷(サンシキ)」と呼ばれる広場で、旗頭、ミリク(ミルク)、棒術、舞踊などの奉納芸能や、パーレー(爬龍船競漕:ハーリー)が奉納されます。これは午後1時頃から始まり午後4時頃まで行われます。豊年祭の多くの行事は、島の東の集落と西の集落が競い合うような形で行われ、青が東の集落、赤が西の集落の色となっています。なお、他の地域にはない鳩間島独特の芸能としては、黄色い衣装に身を包んだ「カムラーマ」があげられます。
 3日目はシィナピキヌピン(綱引きの日)と呼ばれ、大綱引きが行われます。この大綱引きは、その場にいる人は誰でも参加できます。島の人々や観光客が西と東に別れて綱を引き、勝負は3回勝負で行なわれます。(2日目と3日目は他地区のムラプールに該当するものです。)

 なお、豊年祭でパーレーを行うのは鳩間島と黒島で、鳩間島と黒島とは兄弟島と呼ばれているようです。また、豊年祭でパーレーと綱引きの両方を行う集落は鳩間島以外には無く、鳩間島豊年祭の大きな特徴となっています。
 
 2023年の鳩間島の豊年祭は、それまでコロナのため開催が見送られ、実に4年ぶりの開催となりました。
 この年の豊年祭は7月23日・7月29~30日に開催されましたが、 ここでは、豊年祭のメインとなる7月29日(土)・トゥーピンの日の様子を紹介します。
 この日は各御嶽ごとに祈願を行ったあと、マーニ(クロツグ)の葉を頭に巻いた氏子らが友利御嶽に集合し巻踊りを奉納、午後0時半頃になると「みちうた」を歌いながら桟敷広場まで行列しました。
 その後、桟敷広場で旗頭奉納が行なわれ、続いてミリク(ミルク)様が登場し、神酒や作物を持った婦人たちによる巻踊りが奉納されました。
 引き続き、東・西村毎の棒術奉納や、婦人部や郷友会などによる「稲しり節」をはじめとして数々の舞踊などが奉納されました。
 奉納芸能の後は、東と西村の対抗でパーレー(爬龍船競漕)が行なわれましたが、途中東村(青色)の船が転覆したため、この年は西村(赤色)が勝利し、海からの果報を呼び込みました。

 なお、2023年の豊年祭は午後3時15分頃に終了しました。
 
【参考】

 豊年祭メインの2日目、石垣・鳩間間の定期船は各船会社とも通常通りの時刻(臨時便なし)で運航されました。私は安栄観光の高速船を利用し、8:30石垣発の便で出掛け、16:05鳩間発の最終便で日帰りしました。
 最後はあまり余裕がありませんでしたが、パーレー終了まで全て見ることができました。昼間の行事でもあり、石垣島から応援で駆けつけておられる郷友会の方々が日帰り可能なように時間設定・進行管理されているようです。
 会場内には観光客向けの飲み物・昼食の販売はありませんので注意して下さい。(石垣島離島ターミナルなどで買って持参されることをお勧めします。なお、ごみは各自で持ち帰ることになっていますので、ご協力をお願いします。処分はメインランドの石垣島離島ターミナルのゴミ箱等を利用して下さい。)
 豊年祭はあくまで島民のための行事であり、観光客は見させて頂くという気持ちで行動しましょう。
 トイレは、鳩間島コミュニティセンターのトイレが利用できます。

鳩間島の豊年祭2023の様子
 
石垣港8:30発の高速船(西表島経由)で鳩間島へ。鳩間島到着後「いとま浜ターミナル」で休憩し桟橋方向を眺めているところ。 こちらは「いとま浜ターミナル」。到着が9時45分頃で、午後1時から始まる豊年祭まで時間があったので、周回道路を使って島を一周。
ここはBEGINの歌「恋の島 鳩間島」にも出てくる屋良浜です。写真右の木の木陰で休み、潮騒を聴くのが好きです。 約1時間で島を一周し、その後灯台に行った帰り道から港方向を望む景色。
島のメインストリート。 こちらは豊年祭が行われる桟敷広場。髭川御嶽横にあります。
パーレー(爬龍船競漕)が行なわる前の浜。 看板も準備されていました。

各御嶽で祈願を終えた氏子らが「道歌:みちうた」を歌いながら「民宿いだふに」前の桟敷広場まで戻ってきます。 氏子らはカンシバと言われるヤシ科のマーニ(クロツグ)の葉を頭に巻いています。時刻は午後0時半頃です。
まず、旗頭奉納が行われます。 旗文字は東村(青色)は「祈豊」、西村(赤色)は「瑞穂」と記されています。
こちらは東村の旗頭。 こちらは西村の旗頭。

豊年祭開催のアナウンスが行われ、祭りのスタートです。時刻は午後0時40分過ぎです。 ミリク(ミロク)行列の始まりです。ここのミリク様の衣装は他の地域と違って水色と特徴的です。八重山の民謡でもある「弥勒節」の唄声とともに登場します。
沖縄のお祭りの象徴としてとりあげられることの多いミリク様は、海の向こうから五穀豊穣、幸福をもたらすとして崇められている神様です。神酒を持った女性、五穀を持った女性、三角旗を持った女性を従え、ミリク様がゆっくり団扇を動かし進みます。
神酒、五穀、三角旗が見えます。    
 
ミリク様を中心に女性達は円をつくり巻踊りします。

続いて子孫繁栄や子供たちに健康を授けるとされる鳩間島独特の「カムラーマ」の登場です。他の島では見ることはできません。

子どもたちも全員が黄色の衣装をまとって登場します。
「カムラーマ」と子供たちが一緒に踊ります。
杖とクバ扇を持った「カムラーマ」が、円陣を組んだ子供達の真ん中で、しゃがんだ子供たちの頭をクバ扇でなでます。

公民館会長の挨拶?

ここからは奉納芸能の演舞が始まります。まずは東村の棒術からです。棒術には、六尺棒・長刀・柵棒などがあります。
沖縄本島北部のやんばる地域から伝わったものではないかとされています。棒術は各地にありますが昔の形を留めているのは鳩間島だけだとも言われています。 棒術は2人1組で演じられます。これは子どもたちによる刀同士の闘い。
棒(六尺棒)同士の闘い。 長刀と刀の闘い。

確か郷友会の挨拶だったような…。 舞踊1。こちらは婦人会の「マミドーマ」です。(マ=真の、ミドー=女性) 「働き者のよい娘」という意味で、鍬や釜を持って踊る軽快な農耕踊りです。
農作業の所作がみられる八重山独特の伝統舞踊です。    

舞踊2。(演目名は思い出せず)

 

舞踊3。(演目名は思い出せず)
唄は鳩間加奈子さんが担当。久しぶりに彼女の綺麗な歌声を聞かせて頂きました。

竹富町長の挨拶。

舞踊4。(演目名は思い出せず)
郷友会の挨拶?

舞踊5。当日唯一の洋装の女性による踊り。(演目名は思い出せず)
 

舞踊6。(こちらも演目名は思い出せず)
   

続いて西村による棒術が演じられました。
刀同士の闘い。   六尺棒同士の闘い。
 
長刀と刀    
 

続いて舞踊7。こちらは「稲しり節」です。

昔ながらの籾摺り(精米)の様子が演じられています。

舞踊8。「イダ舟」だったかな?!
 

舞踊9。(こちらも演目名は思い出せず) 美しい踊りでした。

舞踊10。「鳩間の豊年祭」だったかな~。
 

奉納舞踊が終わり、最後にパーレー(爬龍船競漕)の東西対決が行われます。場所は桟敷広場前の「前の浜」です。 パーレーのメンバーが浜に下りてきました。その後、旗頭も浜に移動されます。
旗頭は奥側が東村(青色)、手前側が西村(赤色)です。パーレーが行われますが、。豊年祭でパーレーが行われるのは、八重山では鳩間島と黒島のみで、これは鳩間島が黒島からの移民により拓かれた島であることに起因しているそうです。

かつては、豊年祭の棒術やパーレーのメンバーに選ばれることが島の男の誇りだったといいます。

左側が東村(青色)、右側が西村(赤色)です。 沖のブイをターンして戻ってきます。
スタート直後の様子です。向いは西表島です。
 
東村(青色)の舟が転覆してしまいました。聞けば、急ごしらえのメンバーによるぶっつけ本番の競漕で、真っ直ぐ進むことも難しかったようです。   救助の舟が駆けつけました。舟は復原できましたがまだ数名が海中にいます。
その間に西組(赤)の舟は浜に戻ってきました。 干潮時で水深は浅いようです。
東村(青色)の舟と漕ぎ手が戻ってきました。
漕ぎ手がジラバ(古謡)を唄いながら、櫂を掲げて船の周りをねり歩きます。 途中でお酒が注がれます。

予定通りにトゥーピンは終わりました。時刻は15時15分過ぎです。 この後、「いとま浜ターミナル」16時05分発の高速船(上原経由)で石垣港に戻りました。

鳩間島の豊年祭は年を重ねるごとに高齢化が進むとともに、島外の方々の協力なくして開催できないような状況になりつつあります。
長い歴史を持つこの豊年祭がいつまでも続くことを願わずにいられません。


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