八重山の黒糖  更新 2016.03.05


今回は、5項の青字の部分の修正をしました。 


ここでは、八重山のお土産としても有名な黒糖(黒砂糖)について紹介します。 

1.概要

 沖縄では古くから亜熱帯の気候を活かしてサトウキビを栽培し、黒糖作りが行われてきました。
 沖縄県における黒糖作りは、今から390年近く前の江戸時代の1623(元和9)年、琉球王朝尚豊3年、儀間真常が使節団として中国に渡る人に頼んで製糖方法を学ばせ、それを持ち帰らせたことにより普及したことに始まっています。
 以来、サトウキビは沖縄を代表する農産物となり、特に農作物の生産の厳しい島々において基幹作物として生産され続け、また、沖縄県の生活・文化・経済と深いかかわりを持ちながら発展してきました。

 現在、八重山でサトウキビの栽培が行われているのは、石垣島、小浜島、西表島、波照間島、与那国島の5島ですが、このうち黒糖(黒砂糖)を製造しているのは、小浜島、西表島、波照間島、与那国島の4つの島のみとなり、これらの島では、サトウキビを搾って、そのまま煮詰めるという昔ながらの製法で黒糖作りが行われています。それぞれの島での黒糖の製造方法に大差はありませんが、島の土壌や天候、サトウキビの栽培方法等によって、それぞれ特徴のある(個性豊かな)味わいがあります。実際に食べ比べてみると、味や香り、色、食感が異なることが分かります。
 

 
2.砂糖の種類 (分蜜糖と含蜜糖)

 砂糖は、大きく分蜜糖と含蜜糖の二つに分類されます。
 分蜜糖はサトウキビの搾り汁から糖蜜を分離したもので、一般に使われている白砂糖やグラニュー糖です。世界で生産される砂糖のほとんどはこの分蜜糖です。
 分蜜糖は、サトウキビを搾って煮詰め、結晶させて結晶だけを取り出したものを言います。結晶させたあとで、糖蜜(ブドウ糖や果糖が沢山含まれている)を分離するので分蜜糖と呼ばれています。砂糖の結晶は、本来、無色透明ですが、白く見えるのは光が乱反射することによります。

 分蜜糖の製造の特徴としては、搾汁液が煮詰まってきたときに、小さな砂糖の粉(種子:シードと言います)を混ぜて核にすると、その周りに溶けている砂糖(ショ糖)が凝集して結晶が育ち、結晶が大きく育った後で遠心分離機を用いて非結晶部分を取り除きます。非結晶部分は糖蜜と呼ばれ、肥料、飼料、飲料酒、食酢、燃料エタノール、グルタミン酸ソーダ等の有用製品製造の重要な原料となります。

 石垣島にある製糖工場(石垣島製糖株式会社)は分蜜糖の工場で、そこで生産された砂糖(原料糖)は、白砂糖の原料として、本土の精製糖工場に出荷されています。従って、石垣島では黒糖製造は行われていません。 一方、結晶砂糖と糖蜜を分けずにサトウキビの全成分をそのまま煮詰め、一緒に固めたのが含蜜糖でその代表が黒糖(黒砂糖)です。分蜜糖工場とよく似た工程で砂糖を煮詰め、あく抜きをしながら結晶化させ、糖蜜と共に冷やして固めます。結晶を育てるときに結晶の種子(シード)を入れないことと、糖蜜を分離せずにそのまま固めるのが分蜜糖と違うところです。

 八重山では、小浜島、西表島、波照間島、与那国島にある各製糖工場で含蜜糖が作られています。これらの工場で製造される含蜜糖は、黒色をしていることから黒糖(黒砂糖)と呼ばれています。

 蔗糖は、白砂糖で97.7%、グラニュー糖では100%で、黒糖では80%前後ほどで、両者の間に約20%程度の差がありますが、黒糖には蔗糖の他にブドウ糖、果糖、フラクトオリゴ糖等などが含まれています。エネルギーにはあまり差はありませんが、黒糖には他にも、カルシウム、カリウム、マグネシウムなどのミネラル、さらに、ビタミンB群やナイアシンなどのビタミン類が含まれています。
 

 

原材料さとうきび100%の
表示マークです。



ミネラル分の多く含まれる
波照間島産黒糖
 
3.黒糖の製造方法

 秋季になり、気温が低下するに従って、サトウキビの生育は緩慢となり茎中に糖分が増加してきます。
 サトウキビの品種、栽培型、土壌及び施肥法などの条件によって多少異なりますが、この、糖度が一番上がる12月 (サトウキビの穂が出る頃) から4月頃までの時期に収穫(刈り取り)が行われます。また、それに合わせて島の製糖工場が稼動を開始します(これ以外の期間は機械のメンテナンス等が行われています)。

 サトウキビは、刈り取ると醗酵(腐敗)により品質が低下する (搾りたてのサトウキビの汁は緑色ですが、すぐに灰色に変色してしまうほど劣化しやすい) ため、いずれの島でもその島にある製糖工場の処理能力に応じた量だけを計画的に収穫し、トラックで工場へ搬入します。
 これはもしも、精糖工場の処理能力を超えてサトウキビを刈り取ってしまうと、サトウキビが畑で数日間放置され、劣化した原料で黒糖を作らざるをえなくなることになり、結果として品質低下をきたすこととなるからです。

 約2mほどの長さのあるサトウキビは、小さく切断されてから圧搾機に数回かけられ搾汁を絞り出し、不純物を沈殿させて濾過した液を数段階に分けて加熱し濃縮されます。その後、攪拌しながら空気を混入させ冷却をし固まらせると黒糖になります。
 

 
夏のサトウキビ

収穫前の穂が出た冬のサトウキビ
 

4.黒糖(含蜜糖)の製造フロー

原料サトウキビ 梢頭部や枯葉・葉鞘を予め除去
細裂

原料茎をシュレッダーにより細裂

圧搾 ローラーにより圧搾
搾汁液 バガス(サトウキビの汁を搾った残りかす)は製糖熱源やパルプ等に利用
清澄化 搾汁が微酸性であるので、これを石灰(水酸化カルシウム)液を添加して中和する
沈殿・濾過 フィルターケーキ(不純物)は畑の肥料(堆肥)等に活用
清澄液
濃縮 ボイラーの熱を利用して、搾汁を煮詰めて濃縮
攪拌 濃縮液に空気を攪拌混入
冷却・固化
製品化 袋詰め等
 
5.八重山の黒糖(含蜜糖)製造事業所
 
 
 
沖縄県農業協同組合(JA)
八重山地区営農振興センター
小浜製糖工場
西表糖業株式会社
波照間製糖株式会社
沖縄県農業協同組合(JA)
与那国支店製糖工場
50トン/日 100トン/日 130トン/日 50トン/日
竹富町字小浜3225 竹富町字南風見333−41 竹富町字波照間418 与那国町与那国125
2012年3月 新工場完成 2015年4月 新工場完成 2014年1月 新工場完成 2016年1月 新工場完成

【参考】 八重山には黒糖(含蜜糖)ではなく、精製糖(分蜜糖・糖蜜)を製造販売している事業所もあります。

石垣島製糖株式会社  
899トン/日 大日本明治製糖の系列会社です。
石垣市字名蔵243番地
  

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