カンムリワシの観察 作成 2016.01.09

 カンムリワシは、タカ目タカ科カンムリワシ属に分類される鳥で、カラスより一回り大きい鳥です。元プロボクサー・具志堅用高氏の異名で、八重山民謡の「鷲ぬ鳥節」でよく知られており、国内では八重山諸島(石垣島・西表島)に生息しています。国内の生息数は約200羽ほどで、特別天然記念物に指定されています。また、環境省の「レッドデータブックⅠA類」「国内希少野生動植物種」等にも指定されています。

 南西諸島にはトビは生息していませんが、そのためかカンムリワシにはトビと似たような行動が見られます。(カンムリワシを知らない人は、トビと見間違うかもしれません。)
 水田や小川付近の電柱の先端や、見通しのきく高い木の梢などから眼下の獲物を狙って待ち構えている姿がよく見られます。獲物はネズミ、トカゲ、カエル、カニ、ヘビなどの小動物で、カンムリワシは食物連鎖の頂点に立つ猛禽類です。獲物を見つけると一旦傍に降り立ち、それから獲物を攻撃し食べるという習性がありますが、上空から舞い降りて直接獲物に爪を立てることをしないため、獲物を捕り逃がすことがあります。採食行動からは猛禽類というイメージにほど遠く、動作は緩慢です。

 また、道路傍の電柱の先端にとまり、自動車に轢かれた小動物の死骸を食べることもよくあります。特に雨が降ると小動物も活発に動き回り、その分、轢かれる獲物の数も多くなるということもあり、雨後には道路傍の電柱や路上でよく見かけられます。

 しかし、この路上での捕食行動(習性)はロードキルの大きな原因にもなっています。今日では、道路整備が進み、また車の性能も向上したため、スピードを上げて走行する車の接近に、カンムリワシが気付くのが遅れるようになってしまいました。こうしたことから、生息エリア内では、スピードを上げ過ぎてロードキルを生じさせないよう、法定速度をきちんと守りましょう。(因みに、一般的に石垣島の道路は制限速度40km/hです。)
 そして、カンムリワシの生息地に私たちがお邪魔をする、という気持ちを忘れないようにしましょう。
 
後頭部の羽の立ったカンムリワシ 後頭部の羽が立った姿を後ろから見た様子
 
 カンムリワシは、八重山諸島に生息するワシ・タカ類のなかでは最大の野鳥で、全長は約55cmになります。晴れた日などは上昇気流に乗り、上空を旋回しながら「フィッフィッーフィッフィッー」「ホィヨー」と、かん高い声で鳴きます。

 頭部の羽毛は黒色で小さな白班があり、後頭部で長い冠羽状になっていて興奮すると逆立つことから「カンムリワシ」の名が付けられました。 鋭く尖った鉤状の嘴、目の周囲は黄色でふちどり、白と茶の斑点模様の入った腹面のほかは全体に茶褐色で、尾は白色の地に黒褐色の2本の帯があります。


 また、カンムリワシの幼鳥は純白に近い白色で、嘴の付け根から目の周りは鮮やかな黄色、そして冠羽には黒褐色の縞斑があり、成鳥と違ってとても美しいその姿をしています。また、カンムリワシの幼鳥の顔は1羽ごとにみんな違っていて、容易に識別することができます。
 

1.カンムリワシをよく見ることができるエリア
 以下は、あくまでも私がこれまでの経験から観察頻度の高いエリアとして紹介するものです。
 (むしろ私の観察エリアと言った方が適切かもしれませんが・・・)
 
 (1)石垣島
 
 
 (2)西表島
 

2.カンムリワシをよく見かけることのできる状況(環境)
 
このように、見晴らしのよい場所の電柱の上でよく見られます。電柱の上が一番見つけやすい場所です。 電柱の頭頂部にちょこんと留まっています。後頭部の羽が少し立っています。
電柱の腕木に留まっている時もあります。 電線にもよく留まっています。
水田の傍のガードレールや、水田のあぜ道などでもよく見かけられます。 道路に降り立っている場合もあります。
傍に水田や小川などがある見晴らしのよい高木の梢でもよく見かけられます。 このような、近くに水田や小川のある林縁部でよく見られます。
 

3.カンムリワシ(成鳥)の写真
 
モクマオウの枝の保護色に紛れています。 こちらも木々の枝の保護色に紛れています。
 
成鳥の羽裏の様子です。
細い枝先に留まっている成鳥です。
 

4.カンムリワシ(幼鳥)の写真
 幼鳥は、成鳥と違って胸から腹にかけての羽毛、肩羽、雨覆羽が白から黄褐色でとても美しく、別の種の鳥と見間違うほどです。
 
水田の脇の防護柵にちょこんと留まっています。 刈り取りの終わった水田に降り立ったところです。
林縁部の梢に留まっています。 胸の白い羽が綺麗です。
飛び出し前の様子です。 真下から見上げた様子です。
幼鳥の羽裏の様子です。 成鳥の羽と比べると随分と模様の違うことが分かります。
こちらは幼鳥が梢に留まろうとしている瞬間の様子。
 
5.注意事項
 
 車を運転される方は、もしも道路沿いでカンムリワシを見かけたら、スピードを落とし接触しないよう注意して下さい。
 また、写真撮影をする場合には、道路側にカンムリワシを追い立てることのないよう、気配りをして下さい。
 
万一、怪我をしたり衰弱し飛べなくなっている(路上や路肩でうずくまっているなどの)カンムリワシを見つけたら下記へ連絡して下さい。 (カンムリワシ以外の傷ついた野鳥・野生動物も同様です。) 
また、カンムリワシらしき鳥の死体を発見した場合も同様に連絡して下さい。


環境省石垣自然保護官事務所 石垣市八島町2丁目27
0980-82-4768 (時間外090-5287-6119)
石垣市教育委員会文化課 石垣市美崎町16−6
0980-83-7269
 
もしも、自分自身で捕獲・搬送が可能な場合には、下記の野生動物救護ドクターに連絡の上、搬送して下さい。
この場合、治療費の負担はなく、無料で治療を受けさせることができます。


平田家畜病院 石垣市登野城732−1 平田アパート 1F
0980-82-0678
たまよせ動物病院 石垣市真栄里204-332
0980-82-4470
 
 レンタカーで島内観光されている最中などで、万が一、カンムリワシを轢いてしまっても、罪に問われることはありません。
 すぐに連絡し、早期対応をはかれば貴重な命を助けることができますので、協力をお願いします。
 
 Page Topへ戻る     八重山の自然 に戻る     HOME へ戻る

Copyright (c) 2008.8 yaeyama-zephyr

写真の無断転載・使用を禁じます。利用等をご希望される場合はメールでご連絡下さい。