八重山の星空  作成 2016.04.16

1.はじめに
 
 「世界一の星空」として有名なニュージーランドの「テカポの星空」とまでは言いませんが、あなたは、プラネタリウムではなく、大空のもとで満点の星空や天の川を見たことがありますか。また、流れ星を見たことがありますか。
 浜辺や夜間車の通らない小路に寝転んで、満点の星空や天の川を見たいと思いませんか。

 日本一の星空とも言われる八重山ではそれが容易に実現できます。これまでに体験したことのない方にとっては一生の思い出になるはずです。八重山を旅される機会があれば、昼間の島巡りなどだけでなく星空観察(星空浴)で夜も一層充実したものにして頂ければと思います。

 星空観察ツアーは、いくつかのホテルやツアー会社などが開催していますので、これらを利用するのもお勧めです。
2.八重山の星空観察の特長
 
  日本最南端の八重山地方は赤道に近く、一部でも見えるものを含めると、全天88星座のうち、実に84の星座を観察することができます。
国内でこれほど多くの星座を観察することのできる場所は八重山以外にはありません。
 
全天で21ある1等星ですが、八重山ではその全てを一晩で見ることもできます。(1月中旬頃) [第7項参照]
 
八重山地方の上空は偏西風(ジェット気流)のルートから外れており、また南の貿易風の影響も少なく、上空の空気による揺らぎが無いため(大気が安定しているため)星が瞬きません。また、空気も澄んでいて、星空観察には大変適しています。あたかも「星が夜空に張り付いている」ように見えるのです。
 
八重山は亜熱帯域に属しているため、冬季でもそれほど気温が下がらないため、内地の様な防寒対策もあまり必要とせず、冬場の星空観察をすることができます。(但し、八重山では冬場は雨期ですので、星空観察に適した晴天の日がとても少ないのが残念です。)
 
 こうしたことから、八重山は、星空観測に最適な場所と言えようかと思います。
 石垣市は日本3大星名所の一つに認定されています。(他は、岡山県美星町、長野県南牧村)
 
3.観察場所について
 
 八重山が星空観測に最適な場所と言っても、どこでも美しい星空が見られるわけではありません。
 街灯等、夜間の屋外照明等のあまりない離島は別として、石垣島の市街地では街の明かりがとても明るく、美しい星空を見ることは出来ません。
 このため、石垣島島内での観察となると、どうしても街の明かりを避けた郊外に足を伸ばさざるをえません。と言っても、市街地から僅かな距離と時間を移動するだけですが…。この場合、タクシーをチャーターする手もありますが、やはりレンタカーの利用が便利で安価ですのでこちらをお勧めします。
 
 石垣島での具体的な観察場所としては、市街地に近い所では多田浜海岸(真栄里ビーチの西側)、バンナ岳(渡り鳥観察所・南の島の展望台)や万勢岳の展望台あたり。
 少し足を延ばすなら、名蔵湾周辺名蔵ダム崎枝半島西側川平石崎の西側米原海岸。(東部の新空港周辺は空港の照明であまり適していません。)
 更に足を延ばすなら、野底林道の展望台や平久保半島明石パラワールド)あたりもお勧めの場所です。

 春・秋に屋外の自然の中で星空観察する場合は、野生動物、特にハブには注意しましょう。ハブは必ずしも地上にいるとは限らず、樹上に上っている場合もありますので、周囲をよく確認してから観察をするようにして下さい。
 
4.観察タイミング等について
 
 しかし、街の明かりのない所に行けば、毎日いつでも美しい星空が眺められるというわけではありません。
 やはり一番のお勧めの時期は夏です。前述のように八重山では冬場は雨期ですので、星空観察に適した晴天の日はとても少ないのが実態です。夏は台風さえ来なければほぼ毎日晴天が続きます。
 
 もう一つ大切なこととして、月明かりのあまりない日や時間帯を選ぶことです。(新月から半月前くらいまでの間がよく、満月や満月に近い日は適していません。)
 特に美しい天の川を見たいなら、新月に近い日を選ぶことが重要なポイントとなります。

 
 石垣島の月別星空日数と星空率 (過去12年間の平均値)
項目/月 10 11 12
星空日数(日) 10 15 17 23 16 30 25 19 21 13 12
星空率(%) 22.6 35.7 48.4 56.7 74.2 53.3 96.8 80.6 63.3 67.7 43.3 38.7
 
5.観察に適した時期 (主に、八重山ならではの星・星座について示しました。)

星・星座/月 10 11 12
てぃんがーら
(天の川)
*** ****** ****** ***
はいむるぶし
(南十字星)
****** ****** ****** ****** ****** *** ***
むりかぶし
(昴)
***** ****** *** *** ****** ******
カノープス
(とも座)
**** ****** ****
アケルナル
(エリダヌス座)
****** *** *** ******
ぱいがぶし
(ケンタウロス座)
****** ***
 
6.星・星座の紹介 (主に、八重山ならではの星・星座について示しました。)

No. 星・星座名 説 明
てぃんがーら
(天の川)
八重山地方の方言で、天の川は「てぃんがーら(てぃん=天、がーら=川)」と言います。北の空から南の空に流れる「てぃんがーら」ですが、初めて見る方は「雲」と見間違うかもしれません。
はいむるぶし
(南十字星)
(南十字座)
南十字座は、南天の星座の1つで、全天88星座の中で最も小さい星座です。英語での通称「サザンクロス」として知られます。α星はアクルックス、β星はベクルックスと呼ばれ、いずれも全天21ある1等星の1つです。

写真の、中央やや右の水平線上の4星が「はいむるぶし」です。

                ↑
             はいむるぶし
【「はいむるぶし」の南中時刻】
南中時刻とは、星座が1番高く上がっている(南中)時間帯を言います。毎日4分ずつ早くなります。
「はいむるぶし」の観測できる時間帯は月によって変わりますので、以下を参考にして下さい。
(凡その時刻です。)
※ 南中時刻の前後2時間(計4時間)が観測可能です。
   1月1日…06:30  1月15日…05:40
   2月1日…04:30  2月15日…03:40
   3月1日…02:40  3月15日…01:50
   4月1日…00:40  4月15日…23:40
   5月1日…22:30  5月15日…21:40
   6月1日…20:30  6月15日…19:40
 なお、12月前半と6月後半は太陽光で明るいため観測は難しいです。
むりかぶし(昴)
(プレアデス星団)
八重山の方言で、「むりかぶし」とは「群れている星」という意味で、「おうし座」の肩にある群れた星「昴:すばる」(プレアデス星団)の事です。
八重山でこの星が1年のうち見えなくなるのは3ケ月だけで、この星が見えなくなると梅雨入り、東の空から見えてくると梅雨明けとされてきました。
そのため、この星は八重山にとって大変重要な星で、昔の人々はこの「むりかぶし」の位置を見て、種蒔きや田植え時期、収穫の時期を判断し、農作業の的確な時期を把握していました。今日でも星見石や民謡などからそれをうかがうことができます。


写真の、左上が「むりかぶし(昴)」で、中央下は「オリオン座」です。
    ↓むりかぶし

八重山では、「むりかぶし」の他、「むりぶし」、「んにぶし」、「ふなーぶし」とも呼ばれています。
カノープス
(りゅうこつ座)
カノープスは、りゅうこつ座α星です。りゅうこつ座の中で最も明るい恒星で、全天で21ある1等星の1つです。太陽を除けばシリウスに次いで全天で2番目に明るい恒星ですが、1等星の中でも南の空の一番低い位置にあるので、北半球ではなかなか観察するのが難しい星です。(高度の低さから、日本では冬に関東以南でないと見られません。なお、石垣島では最大高度13°まで上がります。)
赤みがかって見えることから、中国では寿星、老人星、南極老人星と呼ばれ、なかなか見られないため、この星を見た者は長寿になれるという伝説があります。

写真の、右下が「カノープス」です。
中央は全天で最も明るいシリスウ、右上はオリオン座です。冬の大三角形も見えます。












カノープス

アケルナル
(エリダヌス座)
オリオン座の近くから天球上を南西に大きく蛇行するエリダヌス川 (エリダヌス座)の南西の果てにある青白い恒星(エリダヌス座のα星)です。エリダヌス座で最も明るい恒星で、全天で21ある1等星の1つです。全天では10番目に明るい恒星です。日本では鹿児島以南でないと見ることができません。
ぱいかぶし
(ケンタウロス座)
はいむるぶし(南十字星)の東側(左側)にあるのが、「ぱいかぶし(ケンタウルス座のα星[リギル]、β星[ハダル])」です。「はいむるぶし」とともに「ぱいかぶし」は、国内では冬季に八重山でしかその全体を見ることができない星々です。(パイとは「南」の意味です。)
ケンタウルス座α星(東:左側の星)は太陽系に一番近い(4.3光年)恒星です。


写真の、左端の水平線上の星がα星[リギル]で、その右側がβ星[ハダル]です。α星は薄雲(or水蒸気)の影響であまり明るく写っていません。

   ↑  ↑       ↑
   α  β     南十字星

7.1等星リスト

明度順 等級 名称 星座名 明度順 等級 名称 星座名
-1.5 シリウス おおいぬ座 12 0.8 アルタイル わし座
-0.7 カノープス りゅうこつ座 13 0.8 アクルックス みなみじゅうじ座
-0.3 αケンタウリ ケンタウルス座 14 0.8 アルデバラン おいし座
0.0 アークトゥルス うしかい座 15 1.0 スピカ おとめ座
0.0 ペガ こと座 16 1.0 アンタレス さそり座
0.1 リゲル オリオン座 17 1.1 ポルックス 双子座
0.1 カペラ ぎょしゃ座 18 1.2 フォーマルハウト みなみのうお座
0.4 プロキオン こいぬ座 19 1.3 デネブ はくちょう座
0.4 ベテルギウス オリオン座 20 1.3 ベクルクス みなみじゅうじ座
10 0.5 アケルナル エリダヌス座 21 1.3 レグルス しし座
11 0.6 βケンタウリ ケンタウルス座
 ※ 冬は1年の中でも1等星を多く見ることができる季節です。

8.イベント
 

 【南の島の星まつり】

 毎年旧暦の七夕の時期(概ね8月上~中旬頃)に開催される石垣島の一大イベントです。
 オープニングイベントの夕涼みミュージックライブや講演会、天体観望会などのほか、星を見るために石垣島全島一斉ライトダウンも行われます。人工の灯りが消えた空には、壮大な「てぃんがーら(天の川)」の流れがくっきり見え、その星の輝きに歓声があがります。
 また期間中は石垣島天文台で星空観望やVERA石垣島観測局の特別公開なども開催されます。

 ※ 「夕涼みライブ&ライトダウン星空観望会」は、例年、「南ぬ浜緑地公園(旧石垣港新港地区サザンゲート広場)」で開催されます。

2015年開催時のもの

同左

9.星空観察などができる施設

石垣島天文台 VERA石垣島観測局 波照間島星空観測タワー
九州・沖縄で最大の口径105cmの光学赤外線反射式望遠鏡は、島言葉で昴を意味する「むりかぶし望遠鏡」の名が付けられています。
夜は天体観望会が土日祝日に開催され、さらに、4D2U(デジタル宇宙)シアターの上映(開館日の毎日午後3時から)も楽しむことができます。両方とも予約制です。
日本にある4基の直径20mの電波望遠鏡をつないで直径2300kmの望遠鏡とし、銀河の立体地図を描くというVERAプロジェクト。そのひとつが石垣島の名蔵ダム近くに建つ巨大なパラボラです。月面の1円玉も判別できるという測定精度で行う、世界に先駆けた最先端の研究です。 日本最南端の有人島である波照間島は、日本で最も良く「むりかぶし(南十字星)」が見える場所です。星空観望では観測センターの屋上に上がりますが、ここには開閉式の天体ドームがあり200mm屈折式望遠鏡が設置されています。

石垣市新川1024-1
TEL:0980-88-0013
開館時間:(施設見学)10:00-17:00
(天体観測会)19:30-2回開催(土日祝日)※要予約
休館日:月曜・火曜

http://www.miz.nao.ac.jp/ishigaki/top にて確認下さい。

石垣市登野城嵩田2389-1
TEL:0980-88-0011
開館時間:10:00-17:00(施設見学可)
休館日:年末年始

竹富町波照間 9305-1
TEL:0980-85-8112
開館時間:10:00~12:00・13:00-17:00
夜間4~10月20:00~22:00/11~ 3月19:00~21:00
定休日:月曜・年始
入館料:大人400円、小人200円
http://haterumajima-hosizora.jp/ にて確認下さい。

10.星にまつわる八重山の民話などについて

No. タイトル 内容
星砂の由来 昔々、十二支の子(ね)の方角(北)にある星[ニヌファブシ]、すなわち北極星が父星となり、午(うま)の方角(南)にある星[ウマヌファブシ]が母星となって子供を産むことになりました。
お産の時期が近づいたので、「母星は子供を生みたいのだけれど、どこで生んだら良いのか」と天の大明神に相談しました。すると天の大明神は、しばらく地上を見下ろして、珊瑚の広がる南の美しい海に浮かぶ竹富島を見つけました。そして、「水が暖かく潮の流れもゆるい竹富島の南の海で産みなさい。」 と教えてくれました。
母星は、言われたように竹富島の南の海に降りて沢山の子供の星を産みました。しかし、海を治めている七龍宮神(ななりゅうぐうしん)は「私に何の断りもなく勝手に子供を産み、美しい海を汚したのは許せない。」と、大変怒ってしまいました。
そして、七龍宮神は自分に仕えている大蛇を呼んで、星の子供たちを全て噛み殺させました。大蛇に噛み殺された星の子供たちの死骸は小さな星の形をした砂となってしばらく海を漂い、竹富島の南にある東美崎(アイミシャン)の浜に打ち寄せられました。これが、星砂のはじまりです。
東美崎の御嶽の神司は打ち上げられた星砂を見てとてもかわいそうに思い、砂浜から丁寧に拾い集め天国に帰そうと考えました。そして神司は、「この星砂を香炉に入れておけば、島の祭りの時に天国にいる母星のところに帰れるだろう。」と考え、集めた星砂を自分の香炉に入れました。香炉に入れられた星砂達は、祭りの時に神司の焚く線香の煙とともに天に昇って行きました。
以降、竹富島では年に一度の東美崎の御嶽の祭りの際、必ず香炉の星砂を入れ替えるようになりました。
こうして星砂は次々に天に昇り、南の方角の母星の周りには沢山の子星が輝いているのだそうです。
むりかぶし(昴)の秘密 これは、「むりかぶし(昴)」がどうして星空の中央に位置しているかという話です。

その昔、北斗七星が天の王様から島を統一しなさいと命じられましたが、これを断ったため北に追いやられました。
次に南七ツ星が命じられましたが、これも断ったため南に追いやられました。
「むりかぶし(昴)」はそれを承諾したので、天空の真ん中を通ることを許されました。
このため、「むりかぶし(昴)」は真直ぐに天に上り、真直ぐに沈むようになりました。

星見石などにより農作業の時期を把握する手段として利用されていた「むりかぶし(昴)」ですが、それだけ昔の人にとっては星の中では特別な存在の星だったのです。
ツンダラ節と「星の砂」 黒島は、享保17(1732)年、琉球王庁の強制移住政策(寄人政策)によって石垣島の東北部の野底村へ400人移住させるよう命じられました。野底は当時マラリヤで多くの住民を失い、それまで田畑を作りに出かける人が多かった黒島から、強制移住の政策がとられたのです。
黒島の宮里集落で仲良く暮らしていた男・カナムイと乙女・マーペーは恋仲でした。幼馴染で将来を誓い合っていた恋人同士のふたりでしたが、村の道を境にして(「道切り」と呼ばれます)、移住する者と残留する者が決められました。マーペーは移住させられ、カナムイは島に残されました。
マーペーが移されたのが野底です。マーペーは、故郷の黒島にいる彼を見たいと思って、険しい野底岳に登りました。しかし、野底岳の南西には、沖縄で最高峰の526mの於茂登岳がそびえ立ち見ることができません。それでも、毎日人目を忍んで山に登り、神に祈りました。祈りながらマーペーは次第に石になっていったそうです。これが、野底に残る、望郷の果てに石に化したというマーペー伝説です。

そして、その伝説は民謡ともなり、「チィンダラ節(黒島での発音で、石垣島ではツンダラ節と発音)」として今日でも歌い継がれています。島に気持ちを残し、悲嘆にくれながら移住していく人々の心を歌ったものとして、よく知られています。(当時はパイオニアからシングルレコードとして出されました。)
その歌詞の中で、「天に輝く織姫と彦星でさえ、七夕の夜には会えるというのに、あなたと私は会うことすらかなわない」と切なく歌われています。
関口宏が作詞し、ヒデとロザンナの出門英作が作曲し、小柳ルミ子が歌って昭和52年(1977)年にヒットした「星の砂」という歌がありますが、これは、この「チィンダラ節」をモチーフに作られたといわれています。
歌詞は「二度と出来ない恋を捨てあなた遠く…」で始まります。

 


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