ドラゴンフルーツ栽培方法  作成 2009.5.6 

1.ドラゴンフルーツの概要

 ドラゴンフルーツはピタヤ(Pitaya,Pitaja:サボテン類の果実の総称:インドシナでの呼び方)とも呼ばれ、三角サボテン科(サボテン科ヒモサボテン属:食用月下美人の仲間)に属する甘い果実を実らせる多年生の登攀性、多肉植物です。
 原産地は中央アメリカ(南メキシコ、太平洋側の中央アメリカ諸国)の熱帯樹林の中で、樹上に寄生している一種の寄生植物です。
 茎は三角状を呈し、茎節には登攀性の気根が発生し、岩面又は樹木に寄生・張り付き生長します。
 各節のひっこんだところから短い刺が1〜3本発生し、株は最高10m程度になります。(竹富島や黒島などでは、なかば野生化した大きな株を見ることができます。) 有機質の満ちた森林の中で腐蝕した枝葉から養分を吸収し、浅く表面に張った根は直射日光に曝されるのを嫌うため、野草などにより表土を保護することが望ましい植物です。

 英名ではNight Blooming Cereus (夜咲くサボテンの意味)と呼ばれています。 毎年、炎天下の夏の高温時に開花結実し(開花は夜間)、その果実はだ円形で、可食部としては果実だけでなく、花や蕾(つぼみ)も食べることができます。 ドラゴンフルーツはビタミン・食物繊維・ブドウ糖及び人体に有効なミネラル類を多く含んでいます。 また、病虫害、不良環境に強く、農薬を必要としない植物です。

 沖縄県では路地栽培されていて、また最近ではビニルハウスを利用して鹿児島県・宮崎県でも盛んに栽培が行われています。
 苗を植えてから実が取れるまで1〜2年しかかからず(但し熱帯・亜熱帯地方に於いて)、ほとんど特別な世話をしなくても育つという、とても手軽な植物です。 また、沖縄県より平均気温が低い本土では、株の生長度合いにもよりますが、鉢植えでは一般に3年以上を要します。また、冬季には室内に取り込むか、温室などで最低でも6〜8℃以上の温度を保たなければ枯れてしまいます。

2.ドラゴンフルーツの種類

 一般的にドラゴンフルーツは、学名:Hylocereus属 (H.undatusやH.polyrhizusなど)に属するもので、白肉種と赤肉種があります。

 
白肉種(ホワイトピタヤ)には数種類ありますが、営利目的で栽培されるのは、収量が多く、受粉率がよく、耐病性・耐寒性・耐暑性などに優れ、しかも自家親和性で人工交配の必要のない品種が選ばれています。 6〜10月が収穫期で、果実重は300〜1000g。 栽培管理により糖度は16度以上になります。 ベトナム産のものは紅龍果、火龍果と呼ばれ、台湾では白仙蜜果と呼ばれています。

 赤肉種(レッドピタヤ)には香りがあり、ホワイトに比べ水分が多い特徴があります。 5〜11月が収穫期です。 赤色の色素は、天然色素としてジュースやシャーベット、口紅などに利用されています。 現在、盛んに品種改良が行われていて、数10種類(天龍果(1号-20号)、獅龍果、尊龍果、祥龍果、福龍果、珠龍果、香龍果など)があります。 ホワイトに比べ、やや糖度の高いのが特徴です。 品種には、自家不親和性と自家親和性がありますが、一般的には自家不親和性であり、この場合はホワイトピタヤと混同して植えられます(人工受粉も行われています)。 なお、ホワイトピタヤの花粉で受粉すると、果実が大きくなる傾向があるそうです。

 この2種以外にも学名:Selenicereusc属 (S.negalanthusなど)に属するイエローピタヤ(ゴールデンピタヤ)があり、これは果実の外皮が黄色をしているのが特徴です。 この黄皮白肉種はコロンビアで広範囲に栽培されており、イスラエルでもヨーロッパへの輸出用として栽培されています。 開花結実習性はHylocereus属とかなり異なり、季候の変わり目が花芽分化の要因になるとも言われています。 主な開花時期は9〜10月で12〜4月にも開花し、自家結実性が強いのですが、人工交配によって結実率や果実重が改善されます。 果皮に刺があり、熟すと収穫時のブラッシングで除去できます。
 種子はレッドピタヤより大きいのですが柔らかいため食感は違和感がありません。 果肉も細かく、食味としてはピタヤの中で絶品と言われています。 果実は150〜400gほどのやや小ぶりですが、ピタヤの中でまだまだ量的に少ない品種で、将来的経済性では価値が高いと言われています。

 その他にも、黄皮赤肉や黄皮白肉で果皮に刺がない品種も出ています。 品種の開発は、近年、台湾やイスラエルで精力的に行われていて、 原産地の中米やベトナムなどから在来種を導入し、改良している状況です。 最近の研究では、ピタヤの枝は、自然に垂らすようにすると、結実母枝になりやすい性質があるようです。 そのため最近では平棚よりも自然に枝を垂らす植え方にするのが一般的です。 また、経済栽培では、手の届く範囲の高さに低く剪定し、収獲しやすい株高にすることが行われています。

3.栽培方法

(1) 苗の購入
  苗は、沖縄県内であれば大型DIYショップや園芸店で果実の苗を取り扱っているお店から手軽に購入することができます。 取扱店にもよりますが、白肉種と赤肉種を合わせて数種類ほど売られています。
  その他の地域では、通信販売などにより、現在では割と簡単に入手することができるようになっています。
  味は赤色品種のほうが甘く人気が有りますが、その分、苗の値段も赤肉種のほうが高くなります。一般にスーパーなどで1個500円〜700円程度で売られている実は白肉種の方です。
  苗の値段は 30cmぐらいの大きさで、白肉種で 500円〜2,000円程度、赤肉種が1,000円〜3,000円程度で売られています。

(2)植え付け(鉢植)
 購入した苗は、1週間以内は濡らしたり雨に打たさないようにし、日乾しするか明るい所に放置しておきます。 そうすれば運搬中に生じた目に見えない傷も乾燥させることによって、自然に治ります。 1週間後は、室外で雨に打たしてもよく、鉢に植えかえてもかまいません。 苗鉢の土壌が十分であれば、1月ぐらいはそのまま成長させてもよく、急いで鉢替えする必要はありません。 鉢替えの時には、引き抜くことはせずに鉢を切り除いて土を付けたまま植えます。
 苗が1本植えの時には、最初は4号(口径12cm)程度の鉢に植え(ビニール鉢でも大丈夫)ます。 鉢はあまり大きいと根張りがよくないので、小さめのものを使うのがコツです。 株が大きくなるにつれ、1回り大きな鉢に植え替えていくようにします。
 鉢土は通気性・排水性の良いものを用い、砂質壌土か市販の培養土(市販のサボテン用土など)、あるいは両者を混合したものを用います。
 ドラゴンフルーツは適応力が極めて強く、その他に砂、礫石等、いずれの培地でもよく生育します。 元肥として、緩効性固形肥料(マグアンプK大粒など)を混ぜ、底にはゴロ土(鉢底石:軽石等)を多めに入れておきます。
 定植時には、まず、鉢の高さから7〜8cmの高さまで培養土を入れ、十分発酵した有機質肥料を手の平に2回ぐらい入れ、それから苗を乗せ、鉢の8分目まで培養土を入れます。
 ドラゴンフルーツは太陽光線がよく当たるところがよく、日照不足のところでは、補光が必要です。小さい鉢の場合には竹の支柱を用い、大鉢の場合には蛇木柱を用います。
 なお、苗を購入直後に植え付けた場合は、すぐに水やりをせず、5日程度たってからやるようにします。(1週間程度乾燥させてから植え付けた場合は、水やりをして下さい。)

(3)灌水
 最初は2〜3日に1回灌水します。 (湿度を保持するため水分は十分にあった方が生長は旺盛ですが、やりすぎは禁物です。)
 通常は培養土の表面が乾いたら灌水をします。 真夏であれば、週2〜3回程度散布します。 生育時の灌水時には液体肥料(後述)を混入して枝葉の生長を促進します。

(4)追肥
 5月頃、開花促進のため施肥します。 緩効性固形肥料の大粒(4号鉢で4粒程度が目安)と3〜4ヶ月に1回有機肥料を追肥します。 (この時期に有機肥料を追肥することが、開花結実をしやすくするこつです。) また、液体肥料の1500倍液をそれぞれ月1回程度の割合で施します(成長期)。

(5)生長の条件
 ドラゴンフルーツは熱帯植物であるため寒さに弱く、最低温度が8℃以下になると黄色の寒害が発生します。寒冷地では加温施設等を設けなければ栽培することはできません。 暖地でも冬場は室内に取り込むようにしましょう。(最低気温から考えると、東京ではほぼ5〜11月上旬頃までは屋外で育てられます。) 反面、耐暑性、耐風性があり土質を選ばない強い生命力を有する植物です。

(6)仕立て方
 放って置くと、3〜5mにまで生長しますので、通常は下図のように仕立てます。

倒れないよう支柱で支え、上に伸ばします。
1.5mほど伸びたら摘心をします。
切り口からわき芽が数本出てきます。
ここから先は垂れ下がるようにし、50cm程伸びたら摘心します。
更にそれぞれの切り口からわき芽が出てきます。
これらも50cm程伸びたところで摘心します。
これを繰り返し、傘のような形に仕立てます。

 苗から1〜2本の枝を伸ばし主幹とし、その他に発生する枝は剪除します。 主幹はヒモで支柱に固定して、主幹が支柱の頂きに達したら頂端の枝は先ずは残しておき、30〜60cmに伸びたらナイロンのヒモで先端を縛り、支柱に結び、下垂させます。

(7)枝の剪定・摘心
 生長した主幹から数本の枝が発生しますが4本位残して若枝はすべて剪定する事により幹が太くなります。
 また、毎年3月には、長大な徒長枝が出ないように若枝はすべて摘心する必要があります。 枝が徒長しなくなると、幹の葉肉中に貯蔵養分が多くなり、主幹の葉肉は短時間で厚くなり色は濃くなります。 剪定・摘心を適切に行い、できるだけ早く株を大きくするのが実を早くつけさせるこつです。
 なお、新芽発生期には花蓄と新芽は間違えやすいので注意します。 新芽の色はやや濃く長く、花蓄はやや丸く、色はピンクまたは乳白色をしています。注意して観察しないと、新芽の代わりに花蓄を間違って摘むことがあります。

(8)開花
 沖縄では苗を植え付けてから1年で開花、結実しますが、本土では3年程度を要します。 毎年4月〜5月に出た新芽を全部摘むと花蕾が出てきます。幹に数個の花蕾が発生しますが1〜2個残して花蕾を摘むことで果実の大きさが調整できます。それから2〜3週間すると花が咲きます。 収穫時期は6月から11月まで数回収穫できます。 なお、花は、夜8時〜明け方にかけて、月下美人のような形の真白い花を咲かせてくれます。

(9)受粉・結実方法
 都会のビルの中などで、家庭用に1〜2本栽培するときには、開花時に昆虫などによる受粉がされない場合があるため、人工授粉させる必要があります。 また、柱頭、花頭、子房を傷つけると受粉に成功しても、果実は形成されないので注意が必要です。
 特に、ドラゴンフルーツでも赤肉種は一般に他家受粉が必要なため、同種・異種いずれか2株以上を用意して下さい。 交配は雄しべが盛んに花粉を出しているときに、花粉を筆の先で採取して、別の株の雌しべの先端が傘のように開いたときに、その先端に付けてやります。 株数が多ければ、同時に2つ以上の株に花を咲かせることは難しくありませんが、開花期間が短いため、株数が少ない場合は開花時期が一致しにくくなります。 その場合は、先に咲いた花の葯をピンセットで採取し、紙に包んでビニール袋に入れて完封し、冷蔵庫に入れて保存します。 別の花が咲いたら、その花粉を取り出して、筆の先に付けて雄しべに付けて雌しべに交配してやります。
 なお、交配する花にはその前後の数時間は雨や水をかけないようにします。 なお交配が成功した花は、しばらくすると子房が膨らんできます。 失敗した子房は落下するので、すぐに分かります。

(10)果実の収穫
 花が散った後、実が大きくなり始めます。そして大体、3週間ぐらいたつと15センチぐらいの実になります。
 果実は開花後から完熟するまで40〜60日程度必要です(都内で栽培している私は、一応45日を目安にしています。) なお、この期間中の施肥は通常、液体肥料:1ケ月に1回のところ、果実を大きくするために、更に月2回ほど回数を増やして施します。

(11)苗の増やし方
 成木の一部(一節)を切って地面に差し込むだけで、いくらでも増やすことができます。

(12)野菜としての利用
 ドラゴンフルーツは果実以外に花も蕾も全部、野菜としての利用ができます。 花は繊維質が多く、低カロリーでビタミンC含量が高くヘルシー野菜として優れています。 料理法は一般の野菜と同じくサラダ、スープ、炒め物、漬け物として利用できます。 新しい夏場の野菜として今後期待されています。

3.ドラゴンフルーツ栽培カレンダー

  


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